障害報酬改定、生活介護に懸念続出 社保審部会「送迎を考慮して」

2024年0311 福祉新聞編集部
生活介護をめぐる発言が相次いだ障害者部会 

厚生労働省は5日、社会保障審議会障害者部会(座長=菊池馨実・早稲田大教授)に2024年度障害報酬改定の概要を報告した。障害者の日中活動を支える「生活介護」の基本報酬に利用時間に応じた区分が設けられたことについて、複数の委員が懸念を表明。「自宅から事業所までの送迎の時間を考慮してほしい」などと訴えた。

 

現在、生活介護の基本報酬は事業所の営業時間によって設定されている。体調不良などで利用時間が短い人がいても、営業時間通りの報酬を得ているとする批判があった。

 

これを踏まえ、今回の改定では、利用時間が「7~8時間」の人を受け入れた場合の報酬を現行とほぼ同じにした上で、「6~7時間」を現行比3%減、「5~6時間」を同3割減とするなど、1時間刻みの報酬区分を導入した。

 

これにより、盲ろう者や精神障害者など、障害特性により利用が短時間になる人を多く受け入れる事業所は不利になる。また、交通の便が悪い地域では、利用者の自宅から事業所までの送迎時間が長いため、利用時間は短くなりがちだ。

 

これについて全国市長会の永松悟氏(大分県杵築市長)は「障害者の住む場所によっては在宅生活を選べなくなる」と懸念した。

 

他の委員からも「送迎が長くなる地域のことを考慮してほしい」「地方では事業を辞める事業所も出るのではないか」といった意見が上がった。

 

厚労省は事業所が不利にならないよう配慮措置を講じるとしているが、詳細は不明。今回の改定は「全体的に複雑で分かりにくい」との見方が多く、配慮措置の内容次第ではさらに複雑になる。

 

生活介護は利用者数が約30万人で、22年度の費用総額は8322億円。障害福祉サービスの中心的なサービスで、利用者の約7割が知的障害者だ。

 

24年度の報酬改定は2月6日に全容が判明。意見募集を経て3月中に告示される。処遇改善関連の改定事項を除き、4月1日に施行される。