〈障害報酬改定〉地域での暮らしを促進 厚労省、3月中に告示

2024年0213 福祉新聞編集部
精神障害者が通う生活介護事業所「マイファーム」(東京)。利用時間 が1~4時間と短い人が3割だ

厚生労働省は6日、2024年度の障害報酬改定の概要(案)を公表し、サービスごとの報酬額を明らかにした。事業所の人材確保のため、職員の処遇改善を図ることが最重要課題だ。その上で、障害者支援施設に入所する人が地域で暮らせるよう促す。施設入所支援や生活介護に加算を設け、利用者の意思決定支援を進める。自傷行為のある強度行動障害と呼ばれる人の受け入れ体制も整える。意見募集を経て3月中に告示する方針だ。

 

同日の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」で明らかにした。報酬の改定率をプラス1・12%(24年度は前年度比で国費162億円増)とすることは23年12月に決まったが、サービスごとの報酬は未定だった。

 

処遇改善は既存の3種類の加算を一本化する。新加算のサービスごとの加算率は、キャリアパスなど事業所が満たした要件に応じて4区分設ける。

 

政府は補正予算で今年2~5月分を賃上げしているため、新加算の施行はそれに続く6月1日とし、2年間の措置とする。処遇改善以外の改定事項は4月1日施行とする。

 

 

施設の報酬は10人刻み

入所施設については入所者の意思決定支援に取り組むことを指定基準に定め、地域での暮らしに移すことを促す。入所定員も減らすよう誘導するため、加算を設けるほか、基本報酬も定員10人刻みで設定する。

 

現在の報酬は「41~60人」「61~80人」など20人刻みで設定し、定員が少ないほど単価が高い。これでは入所者の地域移行により定員を10人減らしても施設の受け取る報酬は上がらないため、見直しが求められていた。

 

この改定により、現在の定員が「40人以下」「41~50人」「61~70人」の施設は報酬が現在よりも高くなるが、反対に「51~60人」「71~80人」の施設は低くなる。

生活介護に時間区分

日中の活動を支える「生活介護」も、基本報酬を定員10人刻みに改める。利用者の1日の利用時間に着目した報酬区分も導入する。

 

現在の基本報酬は事業所の営業時間によって設定されているため、体調不良などで利用時間が短い人がいても、営業時間に沿って高い報酬を得ているとする批判があった。

 

これを踏まえ、例えば利用時間が「3時間未満」の人の報酬は「3~4時間未満」の人の報酬よりも低くし、「3~4時間未満」は「4~5時間未満」よりも低くする。

 

これについては、盲ろうや精神障害など、障害特性により利用が短時間にならざるを得ない人を多く受け入れる事業所が不利になるため、国会審議でも問題視された。

 

そこで厚労省は、そうした不利が生じないよう個別支援計画で定めた標準的な支援時間をもって利用時間の区分を決めると追記し、「一定の配慮措置を設ける」とした。

就労系は成果主義強化

このほか、グループホーム(GH)については1人暮らしへの移行を望む人への支援について加算を設ける。

 

GH退居後3カ月間の支援についても新たに報酬を設ける。

 

就労継続支援については労働時間の長さや平均工賃の高さといった成果に着目して報酬にメリハリを付ける。平均工賃(月額)の計算式は、利用日数が少ない人を多く受け入れる事業所が不利にならないよう改める。

 

障害児のサービスは児童発達支援センターの機能強化や、保育所等訪問支援の拡充によるインクルージョン(包摂)の推進を柱とする。こども家庭庁と合同で検討してきた。