「混ぜる」を自由に 意思を伝える障害者アートワークショップ(神奈川)

2023年1222 福祉新聞編集部
粘土を思うままに触り、手で表現する遠藤さん(左)

重症心身障害者らが通う生活介護事業所「みどり福祉ホーム」(横浜市緑区)は10日、色粘土を混ぜてオリジナル作品を作るワークショップを開いた。日曜午後の開催とあって、同ホームの利用者以外も参加した。

 

「こんなに自由にさせてもらえるとは」――。進路選択の一つとして体験に来た脳性まひの遠藤佑輔さん(15)に同伴した母親は驚きを隠さない。

 

中学3年の遠藤さんは学校で粘土を触ったことはあるが、決められた時間内に決められた場所で、いつもと同じ仲間に囲まれて作品を作るというものだった。

 

それに対し、同ホームの信条は「利用者を決して受け身にさせない」だ。異なる色の粘土を混ぜたらどんな色になるか想像がつかないように、いつもと違う場で知らない人と創作すれば、ひらめきや化学反応が生まれる。

 

そう考えて企画したのは同ホーム職員の大川祐さん。近隣の障害福祉事業所と合同で来年3月29日まで開催する「ココロはずむアート展」の一環として、「混ぜる」を講座としてつくり上げた。

気持ちをカタチに

絵画などを展示するだけでなく、「楽しい」「うれしい」といった気持ちがカタチになっていく過程もアート展の一部であってもよいはず、という思いが大川さんにはある。

 

3年後の高校卒業を見据え、今から日中の過ごし方を探すことが課題となる遠藤さん。粘土を混ぜるときの表情や手の動きを周囲が観察して気付きを得ることは、遠藤さんの意思決定を支える営みとも言える。

 

2024年度の障害報酬改定では、入所者一人ひとりに対し、どこでどんな暮らしをしたいかを探る「意思決定支援」が障害者支援施設の指定基準に規定される見通し。アート活動はそれを具体化する手段として効果的だとみられている。

 

統括所長の荒木傑さんは「心身に重い障害のある人の受け入れ先は大都市横浜でもまだ少ない。本人の意思を尊重するためにも、選択肢を増やす必要がある」と話している。