24時間の介護保障を 在宅ALS患者が勝訴(千葉地裁)

2023年1116 福祉新聞編集部

1日24時間の重度訪問介護を支給するよう千葉県松戸市に住むALS(筋委縮性側索硬化症)の男性患者(62)が同市に求めて争った裁判で、千葉地裁(岡山忠広裁判長)は10月31日、男性の主張を大筋で認める判決を言い渡した。

 

1日平均3時間弱、1人で介護する妻の負担を軽視し、重度訪問介護の支給量を増やさなかった市の判断を「皮相的な見方」と批判。支給量の決定は行政裁量に委ねられるとの原則に触れつつ、「裁量権の範囲を逸脱または濫用したものとして違法」と断じた。

 

男性の代理人、藤岡毅弁護士によると、24時間態勢の公的な介護保障を裁判所が認めた例は初めて。市は「判決を精査する」とした。

 

同居家族が介護する時間を差し引いて公的な介護サービスの支給量を決める例は他の自治体でもあり、判決はそうした運用を改める根拠になりそうだ。

 

訴状によると、男性は2018年2月にALSと診断され、19年8月から障害福祉サービスの重度訪問介護の利用を開始。22年5月、1カ月744時間(1日24時間)の支給を申請したが、市は「妻の負担は大きくない」として却下した。

 

男性は同10月31日、却下取り消しを求め千葉地裁に提訴した。判決は1カ月744時間の重度訪問介護について「基本的には認められるべき」とした一方、男性が医師、看護師の訪問や介護保険の訪問介護も受けていることから、その合計(1カ月約60・5時間)を差し引いた683・5時間を支給することが相当だとした。

 

診察や看護と重度訪問介護は全く別物だが、判決は妻が1人きりにならずに済む点で同じだとみた。また、男性は家事、育児をしながら働き、介護も担って心身の健康を害した妻の精神的苦痛を重くみて、慰謝料などの国家賠償を求めていたが、判決はこれを退けた。

 

ALSは全身の筋力が低下する神経の難病で、国内の患者数は約1万人。今回提訴した男性は寝たきりで、頻回なたんの吸引や体位交換が欠かせず、発語や呼吸する力も弱っている。