「昼間は施設外」促す 障害報酬改定で地域移行へ動機付け
2023年11月06日 福祉新聞編集部厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、障害者支援施設で暮らす人が昼間に施設外の通所事業所で暮らすことを促す方針だ。施設外の通所事業所を見学した場合の加算を設けるほか、施設外の事業所に通う場合は、その通所先が得る送迎加算の対象とする。施設から地域生活への移行を進める動機付けにしたい考えだ。
施設で暮らす入所者の希望を確認し、その意思決定を支えることも施設に義務付ける。10月30日の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」に示した。
アドバイザーからは大筋で賛同を得たが、野澤和弘・毎日新聞客員編集委員は「この程度の加算で地域移行の動機付けになるか疑問だ」と批判。新たな加算が施設を温存することにもなりかねないとして再考を促した。
厚労省は9月27日の同検討チームで障害者支援施設に入所定員の削減を促す考えを打ち出した。その際も野澤氏が不十分だとしたことから、今回、追加の見直し案を示した。今後、年末に向けて詳細を詰める。
障害者支援施設は昼間の「生活介護」と夜間の「施設入所支援」で構成されており、それぞれ事業所指定を受けて報酬を得ている。障害者は、昼間は施設外で過ごすこともできるよう制度設計されている。
しかし、厚労省の調べでは、施設外の事業所に通う入所者がいる施設は全体の25%。施設外に通う障害者はおおむね9人に1人にとどまるという。
地域生活への移行や昼夜分離を進めるには、施設側の動機付けが不可欠とみて報酬で誘導したい考えだ。
食事提供加算は存続
生活介護事業などを利用する低所得者の食費負担を減らす「食事提供体制加算」はこれまで廃止時期の延期を重ねてきたが、今回の改定でも条件付きで存続する方針だ。
「献立作りに管理栄養士らが関わる」「利用者の摂食量を記録する」といった条件を満たす事業所に限り、栄養に配慮したとして加算の算定を認める。
調理にかかる人件費補助の意味を持つこの加算がなくなると、利用者または事業所の費用負担が増えるため、事業所側は繰り返し存続を求めてきた。
虐待防止なども論点
このほか同日の検討チームでは、虐待防止や身体拘束廃止への取り組みが弱い事業所に報酬の減算を導入したり、すでにある減算幅を大きくしたりする考えを示した。
18年度に創設された「障害福祉サービス等情報公表制度」については、従事者数やサービス内容などの情報を未公表の事業所が2割弱あり、そうした事業所の報酬は減算する。
人件費の地域差を調整する「地域区分」については、介護報酬での地域区分を適用することを原則としつつ、一部の自治体に認めている経過措置を3年間延長する方針だ。