民藝から盲人福祉へ 式場医師、初の企画展「見えない世界の美しさに心をよせて」
2023年10月26日 福祉新聞編集部画家のゴッホや山下清を世に知らしめた精神科医、式場隆三郎氏(1898~1965)を紹介する企画展が10月17日、千葉県我孫子市の白樺文学館で始まった。同市や日本点字図書館(東京)などが主催し、盲人福祉に情熱を注いだ式場氏の歩みを展示する。
同図書館によると、式場氏による盲人福祉活動を紹介する企画展を開くのは初めて。企画展の名称は「見えない世界の美しさに心をよせて」で、会期は来年1月14日まで。
図書館が1964年に海外から収集した盲人用の計量スプーン、体温計、1分用タイマーといった日用品を並べ、それらが図書館用具部の設立や、障害の有無にかかわらず使いやすい「共用品」の開発につながったことを展示した。
式場氏はゴッホについて書いた自著の点訳を図書館に依頼した縁で59年、同図書館の後援会長に就任。同図書館創設者の本間一夫氏らが米国での世界盲人福祉会議に参加する渡航費の寄付集めに奔走した。
今回の展示品はその寄付により本間氏らが欧米各国を視察して収集した150点の盲人用具の一部だ。式場氏はその収集を喜び、「我が国の未開拓の盲人福祉に大きな光を与えてくれた」と評価した。
式場氏は36年、千葉県市川市に精神科の「国府台病院」(現・式場病院)を開設。健康な美が宿る日用品を通して社会改革を目指す民藝運動の指導者、柳宗悦を慕って我孫子市に通い、活動を共にした。
式場病院学術研究部の山田真理子さんは「式場は理念を実行に移す人だった。ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)やバリアフリーの推進に大きな影響を与えた」としている。
29日午後2時からは、山田さんらによるトークイベントを同市生涯学習センターで開く。開館は月曜日と年末年始を除く午前9時半から午後4時半。入場料は大人300円。問い合わせは白樺文学館(電話04・7185・2192)まで。