障害者入所施設、10人刻みの報酬設定へ 厚労省、定員減を促進

2023年1007 福祉新聞編集部
入所定員減を議論した検討チーム

厚生労働省は2024年度の障害報酬改定で、夜間に障害者をケアする「施設入所支援」の定員別の報酬設定を10人刻みにする方針を固めた。入所者がグループホーム(GH)やアパートなどに移行した後、空いた分の定員を減らすよう誘導したい考えだ。

 

現在の報酬は「40人以下」「41~60人」「61~80人」「81人以上」の4区分に応じて、障害の程度を示す区分ごとに算定される。定員が少ないほど報酬が高い。仮に定員80人の施設から10人が地域移行し、定員を10人減らしても施設への報酬が増えるわけではない。

 

これでは地域移行や定員減が進みにくいとみて、10人ごとの報酬設定に改める。9月27日の「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」に示し、アドバイザーから大筋で賛同を得た。年末に向けて詳細を詰める。

 

厚労省は26年度末の施設入所者数を22年度末比で5%以上減らすよう都道府県に促している。地域移行だけでなく施設定員の削減も進める考えで、24年度の報酬改定は、これに関連した改定事項が多くなりそうだ。

 

例えば、施設から地域移行して半年以上その生活が継続した人が1人以上いる場合、その施設が入所定員をその人数分減らしたら加算で評価することも検討する。入所者がGHを見学するといった地域移行への動機付けを行う施設も評価する。

生活介護も見直し

施設入所者の昼間のケアに当たる「生活介護」の報酬も夜間と同様に定員を10人刻みに改める。また、利用者の利用時間が短い場合はそれに応じた報酬になるよう、報酬設定も細かくする。

 

施設入所支援は利用者数が約12万人、22年度の費用総額は2082億円。生活介護は利用者数が約30万人で、22年度の費用総額は8322億円。障害福祉サービスの中心的なサービスで、いずれも利用者の約7割が知的障害者だ。

 

それだけに報酬改定による影響は大きく、関係者の関心も高い。入所定員を減らした施設がどんな機能を持つよう制度的に誘導するのかは不明で、この点を明確にするよう求める意見がアドバイザーから上がった。

 

28日の社会保障審議会障害者部会(座長=菊池馨実・早稲田大教授)では、障害者の親の立場で入所施設を望む声があること、地域移行した後の生活を支える人材が不足していることが指摘された。

 

また、同部会の委員が報酬改定の論点に意見を述べる機会が少なく、「資料を読むだけでは立ち行かない」(江澤和彦・日本医師会常任理事)といった不満が複数の委員から上がった。