特養虐待防止、職員少ない時間の対策必要 Uビジョン研究所が提言 

2024年0420 福祉新聞編集部

公益財団法人Uビジョン研究所(東京都、本間郁子代表理事)はこのほど、特別養護老人ホームで起きた虐待の発生要因分析と対策に関する報告書をまとめた。2022年9月~23年12月に報道された27件を調べ、虐待は職員が少ない時間帯に多く発生していることに着目した対策が必要だと提言した。第三者機関による外部チェックの義務化も求めた。

 

報告書は、特養では全介助や認知症の利用者が増えて介護に人手がかかるが、対応できる職員配置基準に見直されていないと指摘。職員が利用者を介護中に、転倒リスクのある別の利用者が立ち上がろうとすると声で止めるが、それでも立ち上がろうとすると強い口調になり、さらに抑圧的な行為になってしまう場合がある。職員1人が複数の利用者を見なければならない状況が虐待につながっているとした。

 

ただ、特養は生活の場であるため、ある程度の事故は防ぐことはできない。そのため、事故の捉え方を明確にすることが虐待防止にも役立つとした。

 

教育体制は職員の不安をなくすための個別指導が重要だとした。職員が自身の行為を批判されたときの衝動的な怒りによる虐待に対しては、自分が正しいと思う判断基準は相手を理解することにより許容範囲を広げることができるとした。

 

職員が困っていることを発言しやすい環境が必要で、経営者は課題解決に一緒に取り組む体制をつくる責務があると提起した。

 

調査した27件は身体的虐待20件、心理的・精神的虐待8件、ネグレクト、性的虐待各3件(重複あり)。職員の気付き、匿名の告発が多かった。虐待した職員は40代が4割で最多。動機の大半はストレスや怒りの感情だった。確認できた中では死亡事案で懲役17年の判決があった。