特養で栽培のホップで地ビール ガーデンで広がる交流(とらいふ武蔵野)

2023年1031 福祉新聞編集部
完成したビールを手にする大脇理事

特別養護老人ホーム「とらいふ武蔵野」(東京都武蔵野市、社会福祉法人とらいふ)のバリアフリーガーデンで利用者、職員も栽培に関わったホップを原材料とするビール「とらいふエール」がこのほど完成した。ガーデンでは花と野菜も育てており、利用者、事業所内保育所の園児、地域住民の新たな交流の場にもなっている。

 

コロナ禍で面会が制限され「早く死にたい」などと悲観する利用者を元気づけようと、花の栽培から始めた。敷地内の空きスペースに車いすのまま作業できる高さのある大きなプランターを用意し、市民団体から植栽の指導を受けながら取り組んだ。

 

普段は笑わない利用者が、花が咲いた時、初めて笑ってくれたのを見て「必死になって取り組んでよかった」と大脇秀一理事は言う。

 

ホップの栽培は、市民団体から紹介された地元企業が、東京でホップを育ててビールを醸造する事業を行っていたことから挑戦することにした。

 

3月にホップの苗を植え、水やりや害虫駆除などをしながら育てると、7月ごろにはつるが特養の3階のバルコニーまで伸びた。8月にホップの実を収穫し、醸造所に送った。ホップは初年にもかかわらず良質で、9月にはオリジナルビールが完成。9月18日の「敬老の日」に利用者にプレゼントした。

 

ガーデンでは多くの花を咲かせて撮影会をしたり、ジャガイモ、スイカ、キュウリなど10種類以上の野菜を育て特養の食事に使ったりしている。さらに保育園児との交流が生まれたり、外気に触れて開放感のある中で面会ができたり、利用者、家族から高評価を受けている。

 

苗、腐葉土などのガーデンの運営に必要な費用はクラウドファンディングで募集した。すると、目標の100万円を超える119万円が集まった。

 

この取り組みは「公共施設」の空間を使った新しい地域交流の在り方として大学と共同研究している。大脇理事は「狭いスペースでもできる。ノウハウを提供するので、ほかの特養でも取り組んでみてほしい」と話している。