事業者の事務負担軽減へ 加算など報酬体系を簡素化〈介護給付費分科会〉

2023年0927 福祉新聞編集部

厚生労働省は5月から社会保障審議会介護給付費分科会で2024年度介護報酬改定に向けた議論を行っている。9月15日は報酬体系の簡素化が論点となり、制度開始から増え続けている加算を整理するよう意見が出た。複雑化した制度を分かりやすくし、介護事業者の事務負担を軽減する。

 

現行で介護報酬のサービスコードは2万1884あり、制度開始時の1760から12・5倍になった。加算の種類も、例えば特別養護老人ホームは8種類から65種類に、通所介護は5種類から31種類に増えた。

 

ただ、加算の算定率をみると21~22年度に平均80%を超えるのは介護職員処遇改善加算など12種類(延べ54種類)で、22年度に算定のない加算が20種類(延べ194種類)、平均算定率1%未満が41種類(175種類)ある。

 

こうした現状に対して委員の意見は、算定率の高い加算は基本報酬に組み入れ、算定率の低い加算は原因を分析して見直す考えでおおむね一致した。

 

その上で、日本労働組合総連合会の小林司氏は「算定が進んでいなくても質の向上につながる加算であれば、要件や単位について検討の余地がある」▽全国老人福祉施設協議会の古谷忠之氏は「基本報酬に含める際は当該加算単位をそのまま上乗せしてほしい」▽日本看護協会の田母神裕美氏は「加算の扱いによっては事業所の経営に与える影響も大きいので慎重に検討してほしい」と述べた。

 

また、日本介護福祉士会の及川ゆりこ氏は「利用者、家族により分かりやすい説明、理解とするためにも報酬体系の簡素化は必要」、慶應義塾大大学院教授の堀田聰子氏は「限られた資源を生かして必要な機能を柔軟に発揮するといったことを、地域レベルでみて報酬体系の簡素化につなげることが欠かせない」という指摘もあった。

老健などの多床室 室料導入には反対

同日はほかに、老人保健施設、介護医療院の多床室に室料負担を導入することも論点に挙がったが、両施設は生活施設ではないこと、自宅に掛かる費用と二重の負担となることなどを理由に反対する意見が目立った。

 

また、災害対策における住民を巻き込んだ訓練の実施、必要な栄養管理ケアを提供するための方策、事故防止のための事故情報の分析・活用方法なども論点になった。

 

分科会の議論は今回で一通り終了した。次回から2回、事業者団体などのヒアリングをした後、具体的な議論に入る。