認知症行方不明者の家族が支援団体設立 悩み共有、実態を発信
2024年10月01日 福祉新聞編集部認知症により行方不明になった家族がいる人らによるNPO法人「いしだたみ」(江東愛子代表理事、長崎市)が8月23日に発足した。当事者が悩みや困り事を共有し支え合い、孤立しやすい実態などを社会に伝えていく。こうした当事者団体の設立は全国で初めてとなる。
江東さんは昨年4月に行方不明になった軽度認知症のある父(当時73)を今も探している。相談先もなく、つらい思いを抱え、父の携帯電話の通話履歴を開示してもらえないなど多くの問題にも直面した。心身ともに疲弊していく中、SNSで同じ境遇の人とつながり、話を聞いてもらって救われたこともあり、当事者に寄り添う団体を立ち上げた。
9月20日に厚生労働省で会見した江東さんは「いろんな気持ちを伝えてほしい。同じ境遇で苦しんでいる人が1人でも多く救われたら」と話した。
団体は当事者が抱える思いを話し合える集いを開くほか、捜索に関する相談、行政や警察などとの情報共有、制度改善を含めた問題提起や情報発信を行う。1月施行の認知症基本法は認知症の本人や家族らの意見を聞くよう定めているため、当事者家族としての意見も示していく。
団体にアドバイスをする永田久美子認知症介護研究・研修東京センター研究部長は「認知症で行方不明の人は年間200人以上いるが、ほとんど関心を持たれていない。世の中に現状を知ってもらうための組織ができたことに大きな意義がある」と話した。