非日常空間で生き方など対話 高齢者と体験型イベント(東京)

2024年0524 福祉新聞編集部
学生時代に高齢者役の芝居をしたことを話すふきさん

75歳以上の案内人と共に今後の生き方や命などを考える「ダイアログ・ウィズ・タイム」が4月27日からアトレ竹芝(東京都港区)で始まった。一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ(志村季世恵代表理事)の主催。

「ようこそ」――。25日に開かれたの先行体験会で、参加者らがドアを開けると、紫色のジャケットに身を包んだふきさん(87)が笑顔で出迎えた。室内は黄色く照らされ、一部階段やスロープもある。参加者らは手足に重りや、白内障を体験できるメガネをつけるなどして高齢者を擬似体験した。

「どうでしたか」とふきさんが尋ねると、参加者らは「水の中みたい」「歩幅が小さくなった」などと口にした。

次の扉を開けると、青色の部屋だった。参加者らが着席すると、ふきさんが改めて自己紹介。写真を見せながら昔の生活や今の生きがいなどを語り始めた。そして、参加者らに話を振っていく。

その後もさまざまな部屋が続いた。それぞれの部屋で案内人は、過去や未来を引き出す質問を繰り返す。最初は固い雰囲気だった参加者も、非日常の空間で語る行為を繰り返すことで、不思議と空気がやわらいだ。

催しは90分で終了。ふきさんのほかにも10人ほどの案内人がおり、全員が75歳以上だという。案内人ごとに微妙にプログラム内容が異なるのも魅力の一つだ。

イベントは6月30日まで。同法人広報は「高齢者を疑似体験して理解する催しではない。対話を通し、限りある命や自分の生き方を考えるきっかけになるはず」と話している。

同法人は2011年設立。これまで視覚障害者の案内で真っ暗闇の世界を体験するイベントなど開催してきた。