多職種で連携することの大切さ〈高齢者のリハビリ 91回〉
2024年05月17日 福祉新聞編集部むすびプロジェクト
2021年6月に発足した「むすびプロジェクト」に参加しています。このプロジェクトは患者の退院後の生活を応援するために医師、看護師、ソーシャルワーカー、事務、コメディカル、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)など多職種が協働しています。
コンセプトは「地域で支え、人に寄り添い、人生を応援する」とし、目標は「在宅生活の維持・質の向上、地域で生き生きと健康長寿」です。回復期病院を退院した後の生活を安心安全に暮らせるようサポートする活動を企画、運営しています。
現在の活動
通所リハビリテーション=PT、OTが対応するリハビリ特化型の通所リハです。現在6病院で開設しています。
公式LINEアカウント「生きいきリハ倶楽部」=退院患者や家族を対象に退院後の生活を支援するため、LINEでつながりを継続しています。配信内容は多職種で作成し、専門分野を生かした情報を配信しています。
復職・新規就労支援=入院早期から評価ツールを用いて多職種で支援しています。退院後も地域の支援事業所などと連携しながら、外来、訪問で支援する場合もあります。
このほか、活動の企画、運営、各病院間の調整などを1週間に1回の定期会議を通して行っています。
退院後をサポート
リハビリは急性期・回復期・生活期と移行していきます。生活期は、急性期や回復期に入院している期間よりはるかに長く、地域のさまざまな人と支え合いながら、生活を送ることになります。退院して地域に戻っても、病気や障害と共存しながら生活する人は多く、また年月を経ていくと年齢も重なり、さまざまな問題が出てくることがあります。そのような状況に対応できるよう、患者、家族をサポートすることがむすびプロジェクトの使命です。
私は作業療法士なので日常生活動作については専門ですが、病気や社会制度などは医師、看護師、ソーシャルワーカーが専門です。さまざまな状況に合わせて各職種の専門性を生かし、役割を果たしていくこと、各職種が役割を担いながら協力し、障害を負いながら生活する人の立場で考えていきます。また、職種が違うことにより、多角的な支援の提案ができます。その結果、患者への支援が偏らず、広い対応が可能となっています。
これからの活動
今後もプロジェクトの活動を充実させながら、生活期のサポートを続けていきます。生活期ではさまざまな困難なことに遭遇する場合もあると思います。
その困ったことを患者、家族のみで抱えず、「生きいきリハ倶楽部」で配信する資料を参考にしてもらったり、相談できる場所や患者会、家族会などのピアサポートのお手伝いができればと考えています。
患者自身が地域の一員として活動できるように支援することは、高齢化社会を控えた日本の課題です。医師、看護師、ソーシャルワーカー、コメディカルといった病院のスタッフと、介護施設、福祉施設で支援している人たちが力を合わせ、末永く地域の患者の生活を支えることができるよう、それぞれのフェーズで、むすびプロジェクトの活動が役に立てればと思います。
筆者=井上恵美子 千葉みなとリハビリテーション病院 リハビリテーション科 作業療法士 課長補佐
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長