栄養と皮膚状態 加齢でバリア機能が低下〈高齢者のリハビリ 88回〉
2024年04月19日 福祉新聞編集部高齢者の栄養と皮膚トラブルについてお話しします。
高齢者の皮膚は年を重ねるにつれて張りがなくなり、ペラペラでカサカサした症状(菲薄化や扁平化、張力の低下、乾燥)が生じることがあります。外的刺激に対して脆弱で外傷や皮膚損傷が起こりやすく、皮膚のバリア機能の低下から細菌感染や皮膚損傷といった皮膚トラブルが生じやすくなります。中でも、農作業などをする高齢者は、日光を浴びる期間が長くなると紫外線が影響してトラブルこともあります。さらに、高齢者に限らず低栄養状態、糖尿病、抗がん薬治療など、疾患や治療の状況によっても皮膚トラブル発生のリスクが高まります。
当院は回復期リハビリテーション病棟です。急性期病院で治療を終えて入院する患者の中には、低栄養や低栄養のリスクなど、何らかの問題がある人が7割近くおり、その中には褥瘡がある人や、冒頭のような皮膚のトラブルを抱えている人が多くいます。そこで重要なのが、保湿などのスキンケアに加えて、必要な栄養素を身体に補給することです。
栄養面からの充足
栄養で皮膚を健康にするために、毎日の食事の中で必要なエネルギーとたんぱく質を十分に取りましょう。
褥瘡がある人に対しては、エネルギーは体重1キログラム当たり1日30キロカロリー以上、たんぱく質は体重1キログラム当たり1日1グラム以上の摂取が推奨されています。必要量を満たすために、1日3食の食事で毎食たんぱく質の多い食品(肉、魚、卵、乳製品、大豆製品)を1品以上取り入れることを心掛けましょう。
例えば、朝食がご飯にみそ汁、お新香のみであれば、納豆や焼き魚などをプラスし、昼食は素うどんだけではなく、卵、肉、エビやちくわの天ぷらなどを組み込むといった工夫で充足を目指します。
特に魚類は、筋肉の合成を助けるビタミンDの補給にも大切です。食が細くなっている人には食品の中でもエネルギーの高い油脂類(油を使った料理、マヨネーズやごま油など)や当院ではMCTオイル(中鎖脂肪酸)を利用することでエネルギーの充足を図っています。
ビタミン
ビタミンCは、イチゴ、柿、レモン、ピーマンなどに多く含まれ、コラーゲンの合成に関わる栄養素です。コラーゲンは皮膚や血管、腱、軟骨などを構成するたんぱく質の一つです。また、ビタミンCやEは抗酸化ビタミンであり、光老化の原因となる酸化ストレスの軽減に関与すると考えられています。ビタミン強化の食品や間食などで上手に果物を取り入れてもよいです。
亜鉛
亜鉛は、牡蠣、牛、鶏レバー、アーモンドなどに多く含まれ、肌の細胞の代謝、分裂に必要な栄養素です。しかし、取り過ぎは銅の吸収を妨げるなどの影響もあるため、過剰摂取には注意が必要です。
今回は栄養と皮膚について紹介しました。さまざまな病気や障害がある人、一人ひとりに合わせた食事管理は大変なことと考えます。今後の参考になれば幸いです。
筆者=海老原樹理 新宇都宮リハビリテーション病院 管理栄養士
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長