薬の多剤併用による有害事象「ポリファーマシー」〈高齢者のリハビリ 86回〉

2024年0405 福祉新聞編集部

ポリファーマシーという言葉をご存じですか。複数を意味するポリと、薬を意味するファーマシーを合わせた言葉です。たくさんの薬ということですが、単に一度に使用する薬の数が多い「多剤併用」ではなく、それによって有害な事象が起きている、あるいは起きやすい状態のことを言います。ポリファーマシーには、多剤併用による薬の飲み間違いや、薬が余ってしまう残薬の発生なども含まれます。

 

高齢者ほどポリファーマシーのリスクが高いと言われます。その理由の一つは薬が多いことです。高齢になると複数の持病を持つ人が増えてきます。そして、病気の数だけ処方される薬も多くなります。70歳以上の高齢者では六つ以上の薬を使っていることも珍しくありません。薬が増えると副作用が起こりやすくなります。高齢者では処方される薬が六つ以上になると、副作用を起こす人が増えることが分かっています。

 

ほかに、加齢とともに体の状態、薬の効き方が変化することも理由として挙げられます。服用した薬は主に肝臓で代謝(分解)され、腎臓から排せつされます。高齢者になると、肝臓や腎臓の機能が低下して、代謝や排せつまでの時間がかかるようになります。加齢により薬が効きすぎてしまったり、副作用が起こりやすくなったり、重症化しやすくなったりするのです。

高齢に多い薬の副作用

高齢者に多い副作用には「ふらつき・転倒」「物忘れ」があります。特に「ふらつき・転倒」は薬を五つ以上使う高齢者の4割以上に起きているという報告もあります。また、高齢になると骨がもろくなるので、転倒による骨折をきっかけに寝たきりになったり、寝たきりが認知症を発症する原因となる可能性もあったりします。

 

そのほかに「うつ」「せん妄」「食欲低下」「便秘」「排尿障害」などが起こりやすくなります。これらの副作用はリハビリにも悪い影響を与えかねません。リハビリをしている患者こそ、ポリファーマシーにならないよう気を付けてほしいです。

薬剤師に相談を

ポリファーマシーにならないようにする方法を紹介します。

 

かかりつけ医や、かかりつけ薬局を持ち、自分の病気と服用している薬をすべて把握してもらうようにしましょう。

 

医師は副作用を避けるために薬の優先順位を考え、必要かどうか検討します。また、高齢者が副作用を起こしやすい薬はできる限り避けます。飲み残している薬、飲み忘れてしまう薬、介護者が飲ませにくい薬があれば、医師や薬剤師に伝えて本当に必要な薬かどうか検討してもらいましょう。

 

「お薬手帳」も活用しましょう。複数の医療機関を受診している場合でも、お薬手帳は1冊にまとめ、医師や薬剤師に現在使っている薬が正確に伝わるようにしましょう。サプリメントや市販薬を使用している場合は、併せて伝えてください。

 

薬は正しく使えば病気の予防や生活の質の向上に役立ちます。ポリファーマシーのせいで不利益をこうむる人が一人でも少なくなるように日々努めています。薬のことはぜひ、かかりつけ薬剤師にご相談ください。

 

筆者=佐藤晴菜 赤羽リハビリテーション病院 薬剤師 主任

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長