多職種連携の意義〈高齢者のリハビリ 83回〉

2024年0315 福祉新聞編集部

医療や福祉に関わる私たちにとって多職種連携・協働という言葉は耳慣れた言葉なので「自分たちはいつも多職種連携・協働している」と思っている人は多いと思います。

 

回復期リハビリ病院を例にすると、医師、看護師、看護補助者、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなど、実に多くの職種がチームとして、患者のケアに当たっています。介護施設でも在宅介護でも多少の違いはあれ、複数の職種が関わっています。病院や施設では「多職種連携・協働」などとあえて言わずとも「日ごろの業務がそれで進んでいる」と思っている人は多いと思います。

意外と知らない他職種のこと

多職種によるチームケアの強みを最大限生かすためには、専門職がお互いの専門性を尊重し合い、力を結集することが必要です。しかし、私たちはほかの専門職がどのように評価し、どのような考えで、どのような方針を立てたのか、それが分からないままになっていることが多いのではないでしょうか? それを裏返せば、あなたがほかを分からないように、ほかもあなたの考えや方針が分からないままになっているかもしれません。理解し合えている「つもり」の連携・協働では、いつかすれ違い、患者、利用者を真から支えられなくなるでしょう。

専門性を知ること

各専門職は患者、利用者に関わり、その専門職の目で計画を立て方針を定めていきます。

 

例えば、医師やセラピストは、身体機能や精神機能、運動機能、生活機能、合併症の有無やリスクなどを評価し、治療やリハビリの計画を定めます。看護師は食事、排せつなどの日常行為や病気の自己管理の状況などを評価し、看護の方針を立てていきます。ソーシャルワーカーは年齢、性別、家族構成、生育歴、職業歴、服装、話しぶり、しぐさなど社会的な側面から評価し、社会的支援を検討します。退院後の生活に関しては、地域の訪問リハやケアマネなどが、家屋の状況、自宅や施設での活動、外出など社会参加について支援内容を定めます。

 

このような総合的な関わりがある中で、私たちは他の専門職種が何を考え、どのような方針なのかが分かっていなければなりません。各職種の個々の方針が理解できていないと、個々の専門職の持つ力は分散し、患者、利用者を「真から支える」力にはつながりません。支える力は各専門職がお互いを知ることから生まれるものだと思います。

相互理解と尊重

個々の専門職種が多方面から関わり、同じ目的に向けて力が結集されることで、はじめて患者、利用者の真のニーズに添った支援ができるようになります。専門職同士がお互いの考えや方針を理解し合うことは、そこに関わる専門職が守らなくてはならない大切なルールだと思います。

 

「知っているつもり」「分かっているつもり」が事故のもとであることも私たちのよく知るところです。自職種について理解してもらうためには、他職種についての理解が必要です。共に行動し、お互いの考えや方針、その根拠などを話し合える環境をつくりたいものです。

 

筆者=松澤寛子 五反田リハビリテーション病院 副主任 医療ソーシャルワーカー

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長