本当にリハビリは必要? 終末期の人への対応〈高齢者のリハビリ 82回〉

2024年0308 福祉新聞編集部

皆さんは「終末期の患者さんのリハビリって何だろう」と考えたことはありますか? 私は緩和ケア病棟で勤務しており、がんの治療が難しくなった患者のさまざまな症状を和らげ、日常生活が少しでも穏やかに過ごせるようにケアをしています。中でも大切にしていることは、患者やその家族の思いを知り、チームで共有し、その人らしくいるのを支えることです。

 

私たちは加齢や病気により、少しずつ他者の手伝いが必要になっていきます。多くの人は、最期まで迷惑をかけずに、できるだけ自分のことは自分でやりたいと感じています。

 

今回は私の実践を通して終末期のリハビリについて一緒に考えたいと思います。

本人の思いを知る

がんの終末期で、徐々に体力が落ち、ベッド上で過ごす時間が長くなってきた、70歳代のAさんが入院されました。「なるべく人の世話にならないようにしたい」「トイレだけは最期までいきたい」と話していました。

 

そこで、Aさんのトイレに行きたい思いを支えるために、医師、理学療法士とともにリハビリを計画しました。するとAさんは「リハビリって頑張って運動したりするんでしょう? これまでいろいろ頑張ってきました。これからは頑張らずに穏やかに過ごしたい。だからリハビリはしたくありません」と言われました。

 

がんと診断され、治療を頑張って続け、治療が難しいという現実や病気の進行を体感し、さまざまな葛藤の中で現実と向き合い、折り合いをつけている状況で、まだなお頑張れと感じさせてしまいました。

頑張らないリハビリ

私はAさんに「今まで頑張ってこられたんですね。頑張るのは疲れますね。説明が不足していてすみませんでした。リハビリの目的は、たくさん歩いたり、運動したりして体力をつけるものとは違います」と伝えました。Aさんのトイレだけは最期まで自分で行きたいという希望をお手伝いすること、体調がすぐれない時は、ベッドの上で関節を動かしたりすることを説明しました。「痛みがあると身体がこわばったり、呼吸が浅くなったりするので、身体をリラックスさせ、呼吸をしやすくするお手伝いをします」とリハビリの効果も伝えました。するとAさんは「なるほど、そういうことであればやりましょう」とおっしゃいました。

その人の思いを支える

その後、Aさんは体調に合わせながらリハビリを続け、看護師やリハビリスタッフとの関わりが楽しみとなり、笑顔も見受けられました。徐々に歩くことが難しくなり、ベッドをできるだけトイレに近づけ、自身で歩いていける工夫をし、意識が低下するまで歩いてトイレに行くことを大切にしました。トイレに行くことがAさんにとって大変なエネルギーを使うことになりましたが、満足な表情でした。ご家族からは「皆さんでこうしてお父さんの思いをかなええてくれてありがとうございます」と言っていただきました。

 

このように終末期のリハビリは、患者の価値観や尊厳を守る一助となるものです。「いつまでも自分らしくいたい」。その人の大切な思いを多職種で支えていきたいですね。

 

筆者=平尾牧子 東京品川病院 緩和ケア認定看護師

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長