痙縮が生じた患者への対応〈高齢者のリハビリ 81回〉

2024年0301 福祉新聞編集部

皆さん、痙縮という言葉を知っていますか? 痙縮は脳血管障害や脊髄の病気などで起こる、まひした手足における筋肉のこわばりのことです。筋肉を「収縮させる指令」と「緩ませる指令」が体にバランス良く伝わらなくなることが原因と言われています。筋緊張が強くなり、クローヌス(足首や関節などが軽度の刺激でピクピク何度も動いてしまう現象)が出現し、「手の指が握ったまま開かない」「ひじが曲がったまま伸びない」「つま先が伸び切っていて歩けない」など日常生活に影響を及ぼす症状がみられるようになります。

 

施設に入居している人が痙縮を起こして困ったことはありませんか。そんなとき、どのように対応していますか。

 

私たちは、早朝・夜間のオムツ交換や体位変換の際、膝の下や股の間にクッションを入れたり、手にはタオルを握らせてあげたりします。ポジショニングに注意することで筋緊張がとれ、自然な姿勢がとれるようになります。

 

ポジショニングは拘縮予防だけではなく、心地よい睡眠を促すこともなります。更衣の際には、ゆとりのある前開きの服を選び、無理のないように痙縮している手をゆっくり動かしてあげましょう。「手を動かしますね」などと声掛けをすることで、患者に痛みや不快感を与えず、無理なく痙縮部を動かすことがポイントとなります。

 

痙縮した部位を無理に伸ばすことはNGです。いきなり伸ばすと、筋肉はビックリしてしまい、伸張反射(筋肉が引き伸ばされたことに反応してその筋肉を急速に不随的に収縮すること)が強まって筋緊張が高くなります。筋肉をまずは緩め、それからゆっくり動かすことで、痛みがなく動かしやすくなります。関節を伸ばす前に少し曲げて、いったん筋肉を緩めておいて、ゆっくり伸ばすようにしましょう。

手指のマッサージ

手指に拘縮がある場合の動かし方の例を提示します=図。親指のつけ根の関節を持ち、ゆっくりと曲げてマッサージをします。緩んできたら、ゆっくりと親指を伸ばします。次に人差し指から小指を持ち、同様にマッサージをして指を伸ばしていきます。10回程度繰り返します。風呂場などで筋緊張が和らいだ時に行うのもよいでしょう。

 

動かし方の例

 

 

拘縮の多くが関節の不動によって発生するため、日常生活の中で、いかに関節を動かすことができるかが重要となります。習慣化して、何気ない時間にできるといいですね。また、セラピストによる勉強会をしたり、ベッドサイドに運動方法の張り紙をするなど、多職種で情報を共有し、協力して取り組むことが必要です。協力し合って痙縮から拘縮への予防に取り組んでみてください。

 

筆者=川上潤 松戸リハビリテーション病院 回復期リハビリテーション看護師

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長