活動維持を目的とした座位体操〈高齢者のリハビリ 66回〉

2023年1103 福祉新聞編集部

「寝る」「起きる」「座る」「立つ」などの動作は人間の基本動作ともいえ、生活動作の中では不可欠な要素となっています。病気や筋力の低下でその動作が困難になってしまった場合も、できる範囲で生活に取り入れていくことが大切です。

 

高齢者は加齢に伴いさまざまな身体機能の低下が起こります。運動不足で体力や筋力が衰えて、思うように動かなくなったり、脳への刺激が減って頭や感情の働きが鈍くなり、認知機能の低下や認知症の発症につながる場合もあります。

 

離床して運動することは、意識障害の改善や二次的な障害の予防など、さまざまな効果があります。日常的に活動することで、主体性の向上や生活の質の向上にも良い効果が期待できます。

 

今回は座位での活動維持を目的として、座って行える体操を紹介します。座位での体操は脚への負担が少ない分、脚を強くする効果はあまり期待できませんが、血液の流れを良くすることができ、内臓への働き掛けにも関与します。

タオル体操

タオル体操とは、タオルやバスタオルを使用して行う体操です。体幹機能やバランス能力の維持向上が期待できます。

 

(1)タオルの両端を持って、バンザイをするように両手を上げ背伸びをする(2)肩の後ろでタオルの両端を両手でつかみ、タオルをつかんだ両手を上げ下げする(3)タオルの両端を持ち、バンザイをしてゆっくり左右に傾け脇を伸ばす(4)タオルの両端を保持し、正面で右が上、左を下にし、ハンドルを回すようなイメージで動かす。左右の腕を入れ替えて、同様の動作を繰り返す。

 

タオル体操

 

棒体操

棒体操とは、棒を使用した体操のことです。棒を使用することで一定範囲内での運動を行うことができます。やや体を大きく動かす必要があり転倒する恐れがあるため、背もたれや肘掛け付きのいすを使いましょう。

 

(1)棒の両端を両手でつかみ、ゆっくりと頭の上まで上げていく(2)棒の両端を両手でつかみ、肩の高さまで上げゆっくりと肘の曲げ伸ばしをする(3)棒の両端を両手でつかみ、肩の高さで棒を水平に保つように意識をしながら腰を回す。

 

棒体操

 

これらの体操は各動作10回をめどにゆっくり行いましょう。体力に自信がある人は回数を多くしても問題はありません。体操時は呼吸を止めずゆっくり息を吸ったり吐いたりしながら行いましょう。

 

リハビリテーションの本質は、「自分らしさを取り戻す」ことが大切です。ベッドの上だけでの生活は自分らしさや、人としての尊厳を失うことにつながります。座位がとれるということは日常生活動作が改善し、社会的な活動への参加が広がり生活の質の向上へ関与します。日常生活の中でもできることを探し、無理なく取り組めることから始めていきましょう。

 

筆者=牟田健人 新武雄病院

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長