フレイル予防に向けた筋力評価と運動法〈高齢者のリハビリ 61回〉

2023年0922 福祉新聞編集部

 前回に続いて、自宅でできるフレイル予防に向けた筋力評価と運動法について説明します。利用者の評価のみでなく、自身の評価として行ってみてはいかがでしょうか。

 

 特に抗重力筋の評価の例を示します。これらの動作は筋力の評価ですが、繰り返し行うことで筋力強化の訓練にもなります。

 

抗重力筋の評価

 

 頭部挙上(図1)=この動作ができなければ起居動作(寝返りや起き上がり)が難しくなります。前回も触れましたが、嚥下訓練の一つでもあります。

 

 下肢挙上(図2)=股関節の屈曲筋群の評価。これが困難であれば歩行が不安定となります。

 

 殿部の挙上(図3)=脊柱の筋群、殿部の筋群の筋力を見る。立位の姿勢や歩行の安定化につながる筋の働きを見る評価です。

 

 側臥位での下肢挙上(図4)=股関節外転筋(中殿筋)の筋力の評価。歩行の安定化に重要な筋力の評価です。

 

 上肢の挙上(図5)=肩関節の可動性とともに上肢の働きを見る↓前方挙上や側方挙上の状態を評価する。同時に上肢の動きで体幹が動揺しないかどうか、体幹の安定性も同時に見ることができます。

 

 座位での下肢挙上(図6)=股関節屈曲筋群の評価。歩行や姿勢の安定化に関与します。

 

 膝の伸展(図7)=大腿四頭筋の評価。下肢の支持、歩行の安定化に関与します。

 

 足関節の背屈(図8)=前脛骨筋の筋力評価。立位や歩行の安定化に関与します。

 

 つま先立ち=下腿三頭筋の筋力を見る。立位や歩行の安定化に関与します。

 

 片足立ち(股関節の外転)=下肢の支持性や歩行のバランス能力をみる評価です。

 

 スクワット=脊柱起立筋、大殿筋、大腿四頭筋など姿勢の保持に関与する筋群の評価です。

 

 段差越え=10~15cmの段差を乗り越える。下肢全体の筋力や全身のバランス能力をみる評価です。

 

 どんな運動ができないかで、どこの筋力が弱いかが分かり、自分の体を評価することができ、同時にこの動作自体が生活を維持する(フレイルを予防する)運動にもなります。無理せずできる範囲で行ってください。

 

筆者=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長