身体をいたわるストレッチの大切さ〈高齢者のリハビリ〉
2023年05月26日 福祉新聞編集部「足が痛くてね。昨日は朝〇キロ歩いたのよ」と話される利用者がいます。がんばっているなという感想を持ちますが、少し気になるところがあります。運動の後、ご自身で身体をいたわっているかどうかという点です。
こどものころ、体育の授業の後に整理体操をした覚えはないでしょうか? 整理体操はどうしても面倒で、おろそかになりやすいものです。しかし、少し行うだけでも動作に変化がみえたり、翌日の気分に変化がみえたりすることもあります。そこで今回は身体をいたわるために簡単にできるストレッチを紹介します。
ストレッチは臥位、座位、立位といろいろな姿勢でできますが、今回は座位で行う太ももの裏の筋肉をストレッチする方法です。
太ももの裏の筋肉をハムストリングスといいます。この筋肉が硬くなり、次第に筋肉が短縮してしまうと膝が曲がる姿勢や腰が丸まった姿勢になります。
ストレッチは、座った状態で足を前に伸ばします。その際に膝をしっかり伸ばしてください。その状態で足首・つま先の方に手を伸ばしていきます。ハムストリングスが硬いと手が届きません。最初は届く場所からで構いません。届いた先でゆっくり呼吸をしながら30秒数えましょう(手の位置や秒数は慣れるまではできる範囲で行います)。
この運動で、つま先を持てた場合には、足の裏を伸ばすようにしてみましょう。そうするとハムストリングスだけでなく、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋もストレッチすることができます。下腿三頭筋は第2の心臓と呼ばれており、末梢の血液を心臓に戻す役割があるので、ストレッチで筋の柔軟性を保つことは血行の改善にもつながります。
これができるようになるには根気よくこの動作を続けることが必要で、少し時間がかかるかもしれませんが、継続することが重要です。
今回紹介したストレッチは、股関節や腰椎に病気がある人や手術を受けられた人は関節に無理がかかる場合があり要注意です。痛みがある場合は実施可能かどうか主治医に確認する必要があります。
ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、届かなかったところに手が届く、ふらついたときにバランスを保つ、といった動作の改善につながります。また、血流の改善、心身のリラクゼーション、気分転換などの効果もあります。身体をいたわることは重要なことです。ストレッチで体をいたわりながら、運動を続けていただきたいですね。
筆者=風間健二 みどり野リハビリテーション病院 課長代理
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長