簡単にできる身体機能の評価〈高齢者のリハビリ〉
2023年04月28日 福祉新聞編集部介護施設は年々その数を増し、一人ひとりに合った個別リハビリのサービスを提供する事業所も増えています。施設や事業所が増えていく半面、利用者や家族、ケアマネジャーはどこを選べばよいのかと迷ってしまいます。
施設の選定にあたって、施設入所後に利用者が「筋力が低下するのではないか」「転倒しないだろうか」など身体の変化を気にされるのではないでしょうか。
利用者や家族に身体の状態を説明するときには、主観的な伝達だけでなく、客観的に伝達されることで、どこがどのように良くなったかが、より分かりやすくなります。リハビリの効果を数値などで確認することによって、生活することへのモチベーションの維持やさらなる向上につながる利用者もいます。
ここで必要なのが「評価」です。今回は「転倒の危険性」を主に簡単にできる評価を二つ紹介します。
リハビリの評価
(1)TUG(Timed Up and Go test)
40センチのいすから立ち上がり、3メートル先まで歩いた後にUターンをして元の位置まで戻ります。いすに座るまでの所要時間が13・5秒以上では転倒リスクが高くなると報告されています。この評価は足の筋力だけではなく、バランス能力とも関係しているため、利用者の日常生活を考える上で必要性は高いです。
(2)FRT(Functional Reach Test)
直立した姿勢から片方の腕を90度挙上して、前方に手を伸ばします。その際、足の位置は開始位置から動いてはいけません。挙げた方の指先の位置から、何センチ前方まで伸ばせたかを計測します。評価のたびに定規を当てて計測するのは大変なので、実施場所の横に目盛りを書いた紙を貼っておくと便利です。伸ばせた距離が15センチ未満の場合は転倒リスクが高くなります。
まとめ
今回紹介した評価法はリハビリの専門病院でもよく行われています。入所前にこれらの評価が行われていれば、その時点(入所前)の利用者の身体機能が推測でき、転倒のリスクも予測できます。
介護現場でも「いす」「ストップウオッチ」「歩行できる広さ(3~5平方メートル未満)」があればどこでも実施可能です。
定期的に行うことで「バランスが悪くなってきたのかな」「筋力低下してきたのかな」という気付きにつながります。運動の効果も把握でき、生活援助や介助方法などの工夫にも役立つと思います。ぜひ参考にしてください。
筆者=齊藤慶太 みどり野リハビリテーション病院 主任
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長