生活が広がる介助法
2023年02月10日 福祉新聞編集部今回は「生活が広がる」をテーマに「整容」「更衣」の介助の際に意識したい点についてお話しします。
整容
整容とは身だしなみを整えることで、洗顔、歯磨き、整髪、ひげそり、化粧、爪切りなどの行為を言います。生命予後に直結するものではなく、優先度が高いものではないかもしれません。また、入浴などと違い、計画的にスケジュールを組んで行うことが少ないのでおろそかになりやすい場合があります。しかし、気持ちを前向きにし、リフレッシュにもなるので重要な行為と言え、身体状況に良い影響を与えると考えられています。
整容介助のポイント
(1)自分自身でできることは自分で行う=すべて介助をする、すべて自身で行ってもらうのではなく、患者さんが自ら行えることは見守り、自身では難しいことや危険と判断したことに対しての介助を行います。
(2)無理なく習慣づけて行えるように工夫する=「朝起きたら顔を洗う」など習慣化することも大切だと思います。整容を行う場所は、移動が可能な患者さんであれば洗面所で行うことが理想的です。
更衣
外出をしない日は着替えを面倒と考える人もいます。整容と同じように更衣をすることで生活を整えることができますし、身だしなみの一つと言えます。また、暑い日に厚手の洋服を着ているなど体調を把握するための観察項目としても重要なポイントだと考えられます。
更衣介助のポイント
(1)室内の温度に注意する=冬場などは特に「室温の調整」を行なってから着替えることが理想的です。着替えの際は薄着になったり、裸になったりします。寒さを理由に行為を拒否する患者さんもいますので注意したいポイントです。
(2)プライバシーに配慮する=自尊心を傷つけないことも重要です。人前で着替えることは恥ずかしいことで、ちゅうちょする患者さんも多いと思います。カーテンなどを利用し周りの目に配慮する、場所を考えて更衣をする、同性のスタッフが介助を行うように心掛けるなど、自分自身の立場に置き換えて配慮することが大切です。
(3)転倒や転落に注意する=着替えることに注意を向けすぎて、転倒や転落への意識が減ることは避ける必要があります。座位バランスや耐久性が低下している人は、地面に足が着くように座る、背もたれ付きのいすに座るなど調整が必要です。
(4)皮膚状態を観察する=更衣介助は、患者さんの皮膚状態を観察する貴重なタイミングです。加齢に伴い肌が脆弱になるため、早めに異変を見つけ、皮膚トラブルを防ぐことも大切です。
まとめ
整容は比較的簡単な動作で、今まで特に意識をせず行ってきた人が多いと思います。そのため、普通にできていたことができなくなったとき、自信を失ってしまいます。
何でも手を貸すのではなく、自身で行うということは患者さんの生活意欲の向上につながります。
身だしなみを整えることで生活リズムを整えることができます。また、社会の中で自立した個人としての自信を保つこともできると思いますので、習慣化することが大切です。
筆者=山口彩香 東京品川病院 理学療法士 主任
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長