入浴に期待する効果

2023年0203 福祉新聞編集部

 入浴は皮膚を清潔に保ち、気分がリフレッシュされ、リラックスして疲労回復につながります。また、肩こりや腰痛などが緩和され、日常生活が楽になります。一般的な入浴によるこれらの効果は、「温熱作用」「静水圧作用」「浮力作用」などによるものです。

温熱作用

 温かい湯に漬かると、体表面近くの血液が温められて全身を巡り体全体が温まります。また、血管が広がり血液の流れが良くなります。血液循環が改善されることで新陳代謝が高まり、筋肉の緊張がほぐれてリラックスし、疼痛緩和や拘縮改善の助けになります。

静水圧作用

 日常生活では、重力の影響で下肢に血液がたまりやすい状況になっています。水中に立つと、水圧により下半身にたまった血液を心臓に押し戻す助けをし、心臓の働きを活発にして血液循環が促進され、末梢循環も改善されます。

 

 首まで湯に漬かる全身浴では、水圧により血液が末梢から押し戻されると同時に胸郭も圧迫されて胸腔内圧が高まるため、心肺系への負荷が大きくなると言われています。

 

 半身浴(横隔膜の高さまで水中に漬かる)は、ベッド上で横になっている時と同じくらいの力で血液を心臓に戻すため、心疾患や高血圧、動脈硬化の人でもあまり心臓に負担をかけずに済むと言われています。

浮力作用

 水中では浮力が働くため体が軽くなります。軽くなると弱い力で体を動かせるため、ゆっくり動かすことで日常生活では動かしにくい範囲まで動かしやすくなります。反対に、水中で体を素早く動かそうとすると水の抵抗により大きな力が必要になります。

 

 

 全身浴をすることで体が温まりリラックスし疲れが取れる、よく眠れる、といった効果が期待されますが、湯温により全身への影響には違いがあります。熱い湯に入ると体への負荷が大きくなるため、長湯、熱い湯は避けて、ややぬるめの湯温での入浴が薦められています。

 

 入浴すると筋肉の緊張がほぐれて関節を伸ばしやすくなります。まひや筋力低下、痛みなどで体を動かしにくくなると屈曲拘縮を起こしやすく、屈曲拘縮が起こることで清潔を保ちにくく循環も悪くなりますので、手のひらや指の間、関節の内側を洗いながら、少しずつ関節を伸ばしていくとよいと思います。「洗いながら」と意識することで、関節に無理な負荷をかけずに済むのではないでしょうか。

 

 入浴後に更衣動作の介助や車いす、ベッド上のポジショニングの際に「腕が伸びて袖を通しやすい」「膝を伸ばしやすい」「ポジショニングがうまくいく」など実感されているのではないかと思います。

 

 また、全身浴が難しい場合は、手浴、足浴をすることで血液循環が促進され、全身が温まります。寝つきが悪い時や気分を変えたい時にも役立つと思います。

 

 温かな湯に漬かりホッとする時間は、誰にとってもかけがえのない至福の時ではないでしょうか。援助を必要とする人々に関わる私たちは、自分事としてとらえられる感性や技術を磨き、その方々に生きる楽しみを感じてもらえるような関わりをしていきたいものです。

 

筆者=江連素実 アビリティーズ・ケアネット リハビリセンター長

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長

 

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