尿と便が教える身体の状態

2022年1209 福祉新聞編集部

 「身体の健康は排せつから」という言葉は、腸活という言葉があるようにメディアや書籍で一般家庭に発信することが増えました。そんな中、私たち介護・医療職は、どのように排便・尿と向き合うべきかを考えたことはありますか?

 

 医療・介護現場で働くケアワーカーの皆さんは、患者・利用者のオムツ交換をする際に便の状態を見る機会が多いと思います。「今日は少し緩いかな」「昨日と色が違うかも」といった見た目の変化に気付けても、そこから疾患へつなげることは容易ではないと思います。しかし「もしかしたら」という考えが、疾患の重症化を防ぐ手掛かりになるかもしれません。

 

 便の成分は(1)水分70%(2)食べ物のカス10%(3)腸粘膜のカス10%(4)大腸菌などの死骸10%で構成されています。医療・介護において便の観察は「形・色・におい」をポイントとしています。さらにそれを「ブリストル・便形状スケール」で分類していきます。タイプ1~7まであり、数字が小さいほど便が硬く、大きくなるにつれて水っぽくなります。正常とされているのは3~5で、それ以外の場合は大腸などの動きに異常が生じていることがあります。

 

 次に尿と腎臓は密接な関係があり、重症化すると腎不全という病気につながります。尿は体の毒素を体外に排出し、バランスを保っています。

 

 しかし何らかの原因で腎臓が悪くなると、尿量が減りすぎたり(400ミリリットル以下/日)、増えすぎたり(2500ミリリットル以上/日)します。さらに、腎臓は心臓と深いつながりがあると言われていますので、尿量の変化により心臓に負担をかけてしまうことになります。特に腎臓・心臓疾患がある人には、できれば毎日尿量のチェックを行いましょう。

 

 さらに尿と便で失敗がある人は共通して、ある筋肉が弱ることが多いです。それが骨盤底筋です。出産を経験された人は聞いたことがあると思いますが、骨盤底筋は臓器などを支える筋肉です。そこが弱ることで便秘や尿失禁につながり、病気へ進行する可能性もあるので、しっかり対策を行うことをお勧めします。やはり「出したい時にトイレに行く」ことが大事になりますので、予防も含めてトレーニングしていきましょう。

 

 (1)仰向けになり両膝を軽く立てる(2)尿道・肛門・膣を締める、緩めるを繰り返す(3)次にぎゅっと締めて3~5秒締めたままにします。少しずつ緩めてこれを5~10回繰り返します。 

 

締める緩める運動

 

 できれば1日3~5セット程度できるといいです。体操する時の体勢は人それぞれでやりやすい形があると思います。イラストの姿勢のようにうつ伏せやいすに座ってなど状態に合わせて行うことをお勧めします。

 

筆者=鈴木一聡 狭山中央病院

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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