口の中の衰えについて
2022年10月28日 福祉新聞編集部今回は、飲み込みや人と話すことに必要な口について詳しくお伝えしたいと思います。
口の周りにも筋肉があり、身体の筋肉と一緒で加齢や病気などで衰えていってしまいます。口の衰えを「オーラルフレイル」と呼ぶこともあります。「フレイル」とは「加齢とともに心身の活力(運動能力や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響があり、生活能力が障害され、心身の脆弱性が出現した状態ですが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」とされています。その中の口の衰えである「オーラルフレイル」は全身の衰えにつながるとも言われています。そのため、いつまでも「健口」にいることが大切となってきます。
「オーラルフレイル」の危険性がある項目を六つ紹介します。
(1)自分の歯が20本未満
(2)滑舌の低下
(3)かむ力が弱い
(4)舌の力が弱い
(5)「半年前と比べて硬いものがかみにくくなった」と思う
(6)「お茶や汁物でむせることがある」と思う
以上の6項目のうち、三つ以上に当てはまった人は「オーラルフレイル」の危険性があります。
次に「オーラルフレイル」になるとどのような問題が起こるか紹介します。
食べることへの影響
(1)かむことができない
歯の本数が少なくなっていくと、硬いものがかみにくくなります。歯がないため「かむことができない」→「軟らかい物を食べる」→「かむ機能が低下する」と悪循環を繰り返してしまいます。
(2)食べ物が残る
舌の力が弱くなると、かんで食事を飲み込みやすい塊にすることや、喉に送り込むことが難しくなり、口の中に食べ物が残ってしまうことがあります。
(3)むせ込んでしまう
舌の力が弱くなると、口の中で食べ物を塊にしている最中にぱらぱらと喉に食べ物が落ちてしまい、ゴックン!という嚥下反射が起きずにむせてしまうことがあります。煮物料理や野菜、果物など水分が多い食べ物をかむ時間が長くなると水分だけが喉に流れ込み、ゴックン!が追い付かずにむせてしまうことがあります。
話すことへの影響
(1)唾液の分泌量が低下
加齢とともに唾液が少なくなることにより口の中の潤いが減少することで、舌が動かしにくくなり滑舌が悪くなってしまいます。
(2)口の筋力が低下
話すことも口の筋肉と深い関係があります。話すということは唇のみではなく、舌や頬、呼吸なども関係し、その筋力が低下することで、滑舌が悪くなることがあります。もちろん歯の本数が少なくなると滑舌が悪くなることもあります。
滑舌はなかなか自分では気付きにくく、自分でははっきり話していると思っていても相手が聞き取りにくいことがあり、他者からの評価が必要になることもあります。
このように日常生活で必要な食べること、話すことへの影響が出てきてしまいます。いつまでも楽しく食事や会話ができるよう口の衰え「オーラルフレイル」を予防していきたいものです。
筆者=小池奈歩 五反田リハビリテーション病院 主任
監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長