食事の環境を変える

2022年0916 福祉新聞編集部

 食事時の周囲の環境は、時に円滑に食事ができるかどうかに影響を与えます。特に認知症や脳血管疾患によって高次脳機能障害があらわれた場合などは影響が大きくなります。

 

 例えば、周囲が騒がしすぎる環境では食事に集中できない患者さんもいます。もともと大人数での食事が好きだった患者さんの場合、大人数で食事ができるように調整することで円滑に食事ができることもあります。

 

 このように周囲の環境は食事の円滑さに影響を与えるため、円滑に食事を取れていない場合の参考として環境調整の具体例を四つ紹介します。

小人数の席へ

 小人数の席や1人の席へ環境を調整することで円滑に食事ができる患者さんがいます。他の人たちの会話や食事時の物音が気になってしまう場合や、もともとは1人で食事をしていた場合、大人数の場にいることでストレスを感じてしまう場合などがあるためです。

 

 そのため食事に集中できていない様子が見られた場合は、前述の環境へ調整して様子を観察してみるのも手です。

静かな環境へ

 周囲の環境音のボリュームを下げることで円滑に食事ができる患者さんがいます。環境音が大きいとそちらに気をとられてしまい、食事に集中できなくなってしまうためです。

 

 例えば、職員が良かれと思ってつけているテレビの音やBGMが、実は静けさを阻害していることもあります。職員同士の声掛けが、患者さんからすると大きくて気をとられてしまっていることもあります。一度食事場所での環境音を意識してみて、騒がしさを感じた場合は静かな環境に調整してみるのも手です。

好みの場所へ

 患者さんごとの価値観に合わせ、好みの場所で食事をすることで円滑に食事ができる患者さんがいます。自身の好きな場所では比較的落ち着いて過ごせることが多いためです。

 

 人はそれぞれ価値観が異なり、昔ながらのBGMが流れている場所が好きな患者さんもいれば、景色を眺められる場所が好きな患者さんもいます。食事が円滑に進まない患者さんには好きな場所を聴取して、その場所で食事ができるように環境を調整してみるのも手です。

席の配置の調整

 座席の配置を調整することで円滑に食事ができる患者さんがいます。目から入る刺激の量が多いことでそちらに気をとられてしまい、食事が進まなくなってしまうためです。

 

 例えば、多くの人が目に入りやすい席や、職員が頻繁に後ろや横を通る席は避ける。壁を向くような配置の席で食事をとる。パーティションや柱などを利用して目から入る刺激の量を減らして食事をとる、などの調整をしてみるのも手です。

 

 以上のように食事をとるときの環境一つで、患者さんが食事をとらなくなるようにも、円滑にとるようにもなり得ます。今回紹介した例は四つですが、環境調整の手段は数多くありますので、患者さんが食事をとれていない場合は環境にも目を向けてみてください。

 

 筆者=村谷翔一  五反田リハビリテーション病院 課長

 監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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