地に足を着ける

2022年0909 福祉新聞編集部

 「地(床)に足が着いている」ことで、患者さんの座位のバランスは改善し、立ち上がりや移乗動作などの日常生活動作が行いやすくなります。その中で、特に影響が大きいのが食事です。

 

 病院や施設で食事の場面をみると、多くの人が車いすで食堂のテーブルまで運ばれ、そこで食事を取っています。車いすに座って、両足を車いすのフットレストに置いたままがほとんどです。

 

 フットレストに足を置いたままの状態では、骨盤が後ろに倒れ、背中は丸くなり、躯幹は背もたれにもたれたままの状態になります。この状態では身を前に乗り出すことが難しくなるので食事は「受け身」の状態になります(図左)。身を前に乗り出さないので手を前に出しにくくなり、手の使用頻度が落ち、「自分で食べよう」という食事への意欲は低下します。背筋が丸くなった状態では咀嚼や嚥下の機能も低下します。

 

食事を取るときの姿勢

地に足着けて

 図右の写真を見てください。両足はきちんと床に着いています。骨盤が立ち上がり、背筋が伸びて、咀嚼や嚥下の機能が高まります。両手も前に伸び、「元気に食事」をしている状態になります。

 

 私たちは自然に身を乗り出して食事をとっているのが普通です。その自然な動作を促していくことがリハビリや介護の重要なポイントだと思います。

 

 元気に食事が取れることは、リハビリをする上での大切な条件であり、その人らしい生活を続ける上での要の部分です。このような日常のちょっとした配慮の繰り返しが大きな効果につながります。

 

 日々、三度々々、繰り返される食事の姿勢。車いすの人はいすに座り直して食事を取る。できなければせめて両足を床に着ける。「地に足を着ける」という習慣が患者さんの生活を変えていきます。

 

筆者=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。

 

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