褥瘡 はじめの一歩

2022年0805 福祉新聞編集部

 皆さんは身近な人で褥瘡ができた経験はお持ちでしょうか? いない人は少し想像してみてください。どのような気持ちを抱くでしょうか? いろいろな状況が考えられるとは思いますが、「できてしまったものは仕方がない」と思うでしょうか。「床ずれができるほど状態が悪くなってしまったのか」と悲観する人もいるでしょうし、「適切にケアをしてもらえているのか」と考える人もいるかもしれません。

 

 今回は褥瘡を正しく理解していただき、適切なケアにつなげることを目的とします。

 

 褥瘡とは、ベッドや車いすなどに接触した部位が長時間にわたって圧迫されることで皮膚や皮下組織などへの血流が滞り、結果として酸素や栄養が行き渡らなくなり、その部位が壊え死ししてしまった状態です。

 

 褥瘡ができやすい状態としては、(1)寝返りなどの基本動作能力の低下による寝たきりの状態(2)栄養状態の悪化(3)皮膚の脆弱ぜいじゃく化(失禁や汗による皮膚の湿潤、高齢、むくみ)(4)痩せからくる骨の突出(5)関節拘縮(6)感覚障害(7)圧迫(8)摩擦・ズレ――などの影響があります。

 

褥瘡ができやすい部位

 

 褥瘡ができやすい部位は体の中で出っ張っている部分で、図に示している部分が該当します。これらの部位では発生兆候がないか日ごろからしっかりと観察をすることが大切です。褥瘡は、皮膚の赤み→皮下出血や水疱→皮膚の壊死と進行し、皮下脂肪・筋肉・骨などにまで褥瘡が広がると治りにくくなります。また、そこから細菌が入ると感染症を合併することがあります。そのため、いかに褥瘡の発生を予防するかが重要です。

 

 褥瘡の予防方法は、これまで挙げてきた要因を一つずつ取り除くことです。

 

 いくつか例を挙げます。まずは褥瘡予防用具の活用として、褥瘡発生リスクに応じてベッドマットレスや車いすクッションなどの体圧分散用具を選定・活用していきます。そして、褥瘡の好発部位を意識しながら、同じ部分に長時間の圧がかからないように、定期的に身体の向きや姿勢を変えます。施設など多くのスタッフがかかわる場合には、時間ごとに姿勢の管理ができる体位変換表などを利用することも有効です。

 

 あくまでも一般的な目安ですが、適切なポジショニング・シーティングを行った上で、臥が位では2時間を超えない程度、座位では30分に一度は、体位変換(除圧)をするよう意識をしてください。

 

 身体を移動介助する時は、皮膚の摩擦を防ぐために、引きずらない対応をとります。尿や便などの排せつ物や汗が皮膚に付着した状態が続くと、皮膚への刺激が加わってしまうため、丁寧にふき取り清潔を保ちます。おむつ、パッドは通気性の良いものを選び、濡れたままの状態が長時間続かないように注意をします。

 

 このように褥瘡予防には一つひとつのケアの積み重ねが必要です。褥瘡ケアの第一歩は、いかに褥瘡を発生させず、予防できるかが重要になってきます。このことをかかわるスタッフや本人・家族を含めて理解・共有し、日ごろからの着替えや入浴の際に、皮膚の状態をよく観察し、皮膚の赤みなどのトラブルのサインを見逃さないよう褥瘡ケアにあたっていただければと思います。

 

筆者=宇都宮リハテーション病院 主任 川﨑圭太

監修=稲川利光 令和健康科学大学リハビリテーション学部長。カマチグループ関東本部リハビリテーション統括本部長。