〈論説〉おひとり様問題 老・病・死をどう支える
2025年10月25日 福祉新聞編集部70歳代の知人が嘆いていた。マンションを借り換えようとしたが、「年齢に加え独り身では、不動産屋に玄関払い扱いで……」。
65歳以上の高齢単身世帯は2030年に約900万世帯の見込み。だが、住居の確保、入院・入所時の身元保証、死後の処置などは身寄りがないと対応が難しい。
この10月から国土交通省は「改正・住宅セーフティネット法」を施行した。単身高齢者、低所得者、障害者らと大家の双方が安心できる環境整備が本格化する。
3本柱は(1)家賃滞納に困らない(利用しやすい家賃債務保証業の普及)(2)賃貸借契約が相続されない(賃借人の死亡時まで更新がなく、死亡時に終了する終身建物賃貸借の認可手続きの簡素化)(3)死後の残置物処理に困らない(「居住支援法人」の業務に残置物の処理を追加)。
その居住支援法人は全国でまだ1000団体余、業務内容もあまり知られていない。知事の指定を受けた社会福祉協議会、NPO法人、不動産業者らが大家と協力して賃貸物件の紹介、家賃の債務保証、見守りなどに当たる。それに遺品整理なども加えられた。
各種の公費補助を受けられるが、原則10年間は要配慮者向け賃貸の管理・運営を義務付けられ、家賃を抑え、一般の入居者数は制限される。ビジネスと社会的貢献の両立は難しい。
未婚、離婚、死別などの急増で単身世帯は40年には1000万世帯を超える。家族頼みの慣習や制度を抜本的に見直すほかない時代に直面している。
厚生労働省の社会保障審議会福祉部会も、この9月、日常生活自立支援事業(日自事業)の拡充案を示した。
認知症の高齢者、精神障害者、知的障害者ら対象の日自事業に身寄りのない高齢者を加え、入院・入所の手続き、死後の事務なども支援する提案だ。従来通り福祉制度利用の手続き、日用品支払い、貯金通帳の預かりなども引き受ける。
利用料は原則自己負担だが、所得により減免される。実施主体は「市町村社協、社会福祉法人、NPO法人、社団法人など」を想定し、都道府県への届け出制で、違反行為には営業停止や罰則を設ける。
日自事業の利用者は近年5万6000人と横ばいで、「おひとり様」も対象に広げて活性化してほしい。
判断能力の乏しい認知症高齢者らを支える法務省主導の成年後見制度も利用者は約25万人にとどまる。各種の契約締結、財産管理などに助力・代理の必要な推定対象者の2%程度に過ぎない。利用しやすい制度へ改正作業中である。
多様な手法で寄り添うのは時代の要請だが、縦割り行政を超えた統一戦略や各制度のすみ分けを考える段階でもある。まず、たらい回しされない総合的な「相談窓口」を地域ごとに整えることから始めてほしい。
みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

