〈論説〉社会保障の予算編成 どうする物価や賃上げ
2025年09月27日 福祉新聞編集部
2026年度の概算要求は出そろい、予算編成作業が本格化する。総額は122兆円台、うち厚生労働省要求は約34兆8000億円、いずれも過去最高である。
公定価格の医療や介護、福祉は、政府が現下の物価、賃金の上昇を価格転嫁するほかない。経済財政諮問会議の「骨太方針2025」も「高齢化による増加分に相当する伸びに、経済・物価動向等を踏まえた対応に相当する増加分を加算」とブレーキをやや緩めた。
一方、国と地方の借金残高は1300兆円と先進国最悪で、国債の元利払いだけで32兆円余に上る。借金まみれの渦中で予算の分捕り合戦の様相にある。
社会保障の焦点は、まず26年度改定を控える診療報酬への財源配分である。前回24年改定では医療スタッフの賃上げに「ベースアップ評価料」が新設された。対象は看護職、理学、作業、言語聴覚のリハビリ職、薬剤師、介護福祉士、管理栄養士ら約20職種、外来・在宅の初診6点(60円)、入院165点(1650円)などをつけた。目標は2年間で賃金4・5%引き上げ。
新鮮な印象を覚えたのは、医師、歯科医師を除くスタッフの待遇改善を図ること。賃金水準が長年据え置かれ志望者も減る苦境に、やっと目が向けられた。
もう一つは、被保険者が負担する診療報酬でスタッフの待遇改善に、いわば直接協力してもらうこと。
評価料は、医療機関の申請で適用され、病院は9割が届け出たが、診療所や訪問看護ステーションは4割程度にとどまる。「届け出内容が煩雑」「次回改定で存続されるか不明」との声が目立つ。賃上げ実績も3・4%アップにとどまった。
この反省を踏まえどう改善するか。医療・介護・福祉とも物価、賃金対応は金額なしの「事項要求」で、予算編成過程で決まる。
介護の窮状はもっと深刻だ。24年報酬改定で基本報酬引き下げの訪問介護は倒産・廃業が相次ぐ。訪問介護事業所ゼロの市町村は昨年109、1カ所のみも268(NHK調査)。「保険証あってサービスなし」の危機状況が広がりつつある。
各種の賃上げ加算は「介護職員等処遇改善加算」に一本化されたが、27年の次期報酬改定を待たず緊急の手当に迫られている。
さらに、長年抑え込んできた事業所運営に直結する基本報酬自体の引き上げに踏み切らないと、事業所は疲弊し、立ち直れない。
知事、市町村長1723人(有効回答)のうち97%が介護保険の存続に危機感が「とてもある」(40%)「ある程度」(57%)と訴え、85%が国や利用者負担などの引き上げを検討すべきと答えた(共同通信調査)。
40歳加入を20歳加入に切り替えるような、介護保険制度発足以来の大命題に取り組む節目を迎えている。
みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職