〈論説〉40年代の介護・医療 地域の生き残りかけて
2025年06月21日 福祉新聞編集部
65歳以上人口が最多になる2040年へ、各種の長期施策の目標年は切り換えられつつある。
厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会は「中間とりまとめ」を公表した(介護版と略)。40年を目指す「新たな地域医療構想」も固まった(医療版と略)。
40年には65歳以上がほぼ4000万人、とりわけ介護と医療に頼る85歳以上が現在より300万人も増え1000万人台に乗る。
一方、15~64歳の働き手は1100万人減の6200万人程度に落ち込む。さらに昨年の出生数は初めて70万人台を割り、少子化は予測より深刻だ。どの国も地域も、戦争以外では未体験の人口構造の大激変である。
ただし、高齢化の速度もサービス需要の変化も地域差は大きい。介護版は「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3種に分け「地域軸、時間軸を踏まえたサービス提供体制の確保」を提唱した。
医療版も「都市部では、急増する高齢者救急や在宅医療の受け皿を整備、過疎地では患者や医療従事者の減少に対応しながら地域の実情に応じた医療機能の維持を特に課題」とした。
それぞれの自治体・地域で近未来の対策に取り組むほかないのだ。
介護版は、地域ぐるみの支え合いの「地域包括ケア体制」の深化を改めて求めた。医療版は、従来の病床機能の再編成という入院医療の変革を超え、「外来医療、在宅医療、介護との連携、精神医療」を加えて医療全般の衣替えを強調する。
複数の持病を抱える要介護者、独り暮らしの認知症患者らを地域で、いかに「治し・支える」のか。診療所や病院へ通うのも難しい住民が増え続け、訪問診療・往診、訪問看護が必須になる。拠点病院からの医師派遣や巡回診療、さらにオンラインによる遠隔診療などの普及に迫られる。
介護版では、過疎地などで自治体が認める場合には人員・設備・運営基準の緩和や見直し、同一事業者に訪問介護と通所介護の提供を認める連携・柔軟化などが提案された。
医療版は内容を詰めたうえ27年度から順次実行される。介護版も同年度開始の介護保険事業計画などに盛り込んでいく。しかし、同じ問題意識と改革の方向性でありながら、なぜ介護版と医療版を合体した報告・方針にしないのか。
「医療、介護の状況を地域別に見える化し、分析して提供体制を考える必要がある」「医療介護連携の一層の推進が必要で、新たな地域医療構想と介護保険事業計画がうまく接続するよう地域のさまざまな関係者間で情報共有や議論が必要」(いずれも介護版の要約)
まさにその通りだ。審議会や行政の「縦割りの壁」を撤廃しないで、40年代の最難問に取り組めるのだろうか。
みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職