〈論説〉医療・介護・福祉の報酬 物価をどう反映させる

2026年0124 福祉新聞編集部

 物価や人件費はじりじり上がり、公定価格に頼る医療・介護・福祉を直撃する。政府は2025年度補正予算、26年度予算案を軸に対策に大わらわだ。

 2年ごとの診療報酬改定は、技術料や人件費などに当たる本体部分を3・09%引き上げ、30年ぶりの高水準にされた。3年ごとで来年度改定の介護報酬と障害福祉サービスは、補正予算での半年間の賃上げ支援などを引き継ぎ6月に臨時の処遇改善を行う。

 だが、インフレは当面収まりそうにない。改定年を待てずに物価などの変動に毎年振り回される。抜本的な対策はないのか。

 診療報酬は1点10円ですべての医療行為を値付けする。数え方にもよるが、推定約7000項目近い(別に薬価基準は約1万4800品目)。単純に言えば、物価が1%アップなら1点10円を10・1円にして主要項目に掛ければ済むではないか。この物価スライド方式は制度化まではされなかったものの、70年代には実質的に行われた。

 厚生労働省出身の島崎謙治国際医療福祉大教授は物価・人件費スライド制の導入を提唱する。
(1)薬剤費を除く医業費用を人件費分と物件費分に大別する(例えば、人件費分5・7円、物件費分4・3円)(2)それぞれ毎年の適切な賃金上昇率、消費者物価指数で上積みし、1点単価を決める(3)改定のない年度は各点数を維持し(2)で算出の1点単価を乗じる。

 米国のメディケア(高齢者らの公的医療保険)や韓国の公的医療保険も単価の変動制を採る、という。「私案はたたき台」と島崎教授は論議を期待する。

 介護報酬、障害福祉も1単位10円でサービスが値付けされる。診療報酬とは異なり都市、農村部などの人件費の高低を考慮し地域差を設ける。東京都は介護保険について物価、賃上げを見込む基本報酬の単価設定や物価スライド方式等を検討するよう緊急提言した(昨年11月)。

 スライド制は有効な対策だが、厚労省幹部に打診すると、「物価と人件費に連動なら今年度の診療報酬は本体4・6%前後もアップ。公費と保険料の大幅な引き上げを伴う。財務省も健康保険組合も猛反対する」とお手上げだ。

 ではどうするか。「毎年度改定し、物価や人件費の上昇を追い掛ける」。財務省は難色を示すが、公費を積み増す補正予算より保険料収入も当てにできる当初予算で対処する方が財務省にも得策ではある。その駆け引きが介護保険や障害福祉の臨時報酬改定につながる一因になった。

 だが、デフレからインフレへ経済の大転換期に新たな仕組みを模索すべき節目だ。毎年度改定でしのげるのは、せいぜい数年程度ではないか。

 

みやたけ・ごう 毎日新聞論説副委員長から埼玉県立大、目白大大学院の教授などを経て現職

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