大阪狭山市教委と大阪公立大がSSW養成で連携協定 「カギを握る存在に」
2025年08月03日 福祉新聞編集部
大阪府の大阪狭山市教育委員会は7月11日、大阪公立大スクールソーシャルワーク評価支援研究所(所長=山野則子教授)と、スクールソーシャルワーカー(SSW)の養成および研修などで連携協定を結んだ。いじめや虐待などの対応で「SSWはカギを握る存在」と位置付けた。文部科学省が、SSWを全国で活用し始めた2008年から17年。「養成」まで視野に入れた官学の協定は珍しく、福祉と教育の融合に新たな光を放ちそうだ。
「(大阪狭山市は)一人ひとりを大切にする教育の推進を目標に掲げています。今回の協定締結を心強く思っています」
竹谷好弘教育長は、こう話した。
協定締結のきっかけは、大阪公立大が開発したAI(人工知能)を使ったスクリーニングシステム「YOSS(Yamano Osaka Screening System)」の活用。大阪狭山市教委は22年10月、市内の全小中学校(小学校7校、中学校3校)にYOSSを導入、翌23年度から運用してきた。
YOSSは、児童生徒の潜在的SOSを早期発見して、いじめや虐待などの深刻な事態を未然に防ぐシステムだ。
不登校や衣服の乱れ、遅刻など約40項目について担任や養護教諭が、児童や生徒の「気になる程度」を点数で入力する。
AIがどんな支援を検討すべきか判別。それを基に、全児童生徒を対象にスクリーニング会議を実施する。こども食堂などの地域資源の活用や、児童相談所など専門機関の利用が必要と判断されたこどもについては、第2段階の校内チーム会議で検討する。
この一連の会議、特に校内チーム会議に、福祉専門職としてSSWが出席。福祉的視点から助言する。最初と最後の判断は、教員やSSWなどの福祉専門職が人間の目で行い、AIはあくまでもその礎となるデータ提供者。「AIサンドイッチです」と山野教授は言う。
竹谷教育長は「SSWは、YOSSの運用のカギを握る存在です」。寺下憲志教育監ら市教委の出席者からも「上手に判断してくれて、目標が立てやすくなった。SSWは、社会福祉の観点から、地域の資源とつないでくれる。こどもへの手立てをずばり言ってもらえるので、教員としては心強い」との話が出た。
連携協定の第一条には<SSWの養成および実践的な研修の推進を図る事により、学校現場における支援体制の強化及び地域社会への貢献を目的とする>と書かれた。
具体的には、市教委がSSWを目指す学生に、SSWの仕事をつぶさに体験できるインターンシップ的な場を提供する。
また、SSW評価支援研究所が、小中学校の先生を対象にしたYOSS活用のファシリテーター研修を行う。SSWに欠員が出たときも迅速な対応が期待されている。