公務員ヘルパーの再興を〈コラム一草一味〉
2025年05月08日 福祉新聞編集部
結城 康博 淑徳大学 教授
4月10日、厚生労働省が「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方検討会」の中間報告を公表した。しかし、私は物足りなさを感じた。
特に、深刻な「中山間・人口減少地域」における介護サービスの在り方について、「公務員ヘルパー」の再興といった論点に触れられなかったことが残念であった。
もはや、このような地域で、既存の介護保険をベースにした仕組みでは、訪問介護サービスなどを維持することが難しい。市町村が主体となり直にサービス提供すべきである。そして、公務員ヘルパーが従事するしかない。ここで述べる公務員ヘルパーとは「契約社員」ではなく、終身雇用となる正規社員としての公務員を意味する。
そもそも、介護保険以前は、多くの市町村で公務員ヘルパー制度が採用されており、一部、措置制度とも重なって行政サービスとして提供されていた。当時、私も役所勤めをしていたが、採算性にとらわれずに訪問介護事業を展開していたと記憶している。そのため、中山間地域を中心に公務員ヘルパーが従事することで、サービス提供の維持を図るべきであろう。
また、これらの施策は「低賃金」と根付いている介護職のイメージを、一定程度アップすることができ、若者が雇用先として興味を抱くきっかけにもなる。
正規の公務員であれば待遇も安定しており、将来性も見いだせる職種として想定されやすくなるからだ。中山間地域は人口減少に苦慮しており、若いヘルパーらが公務員として定住すれば、地方創成の観点からもメリットがある。
しかも、ハラスメントなどの問題ケースにおいても、公務員ヘルパーであれば、民間介護事業者とは異なり、一部、指導的な立場で「ケア」に入ることも可能である。もっとも、このような処遇困難ケース対策を考えた場合、都市部においても公務員ヘルパーの役割は期待できる。
介護人材不足が深刻化している現在、抜本的な介護施策を講じない限り、40年は「制度あってサービスなし」といった事態になるに違いない。