卒業生の一般就労117人 障害者が学ぶ博愛大学校どりーむ(大分市)

2025年0507 福祉新聞編集部
うどん店「府内のおうどん」で働く実習生たち

支援学校高等部や高校を卒業した障害者が寄宿しながら学ぶ、博愛大学校どりーむ(社会福祉法人博愛会)の入学式が、4月8日に行われた。第23期生8人が入校、2年後の一般就労を目指す。卒業生の一般就労は21年間で117人。大分市の中心街に昨春開店したうどん店も、どりーむ大学校生らの実習の場として定着し、盛況の中で1周年を迎えた。「障害者こそ、社会の真ん中で働くべきだ」と説く、釘宮卓司理事長。博愛会の「生産する福祉」が、全国の羅針盤になる。

「知的障害者は、なんで中学を卒業したら就職しないといけないのか」

釘宮理事長は、若いころからこう思っていた。

2003年春、大分市中戸次の障害者施設「第二博愛寮」で、博愛大学校どりーむを開校。10年後の13年春にJR大分駅近くに博愛会地域総合支援センターができると同時に移転した。

働く力、暮らす力

博愛大学校どりーむは原則2年。「働く力」と「暮らす力」を培う。現在は、就労移行支援と宿泊型自立訓練という福祉サービスを組み合わせて運営。企業での職場実習や社会人としてのマナー、発信力、傾聴力などを養うカリキュラムに加え、介護職員初任者研修を受講して資格取得を目指すこともできる。

これまでに約150人が卒業、うち117人が星野リゾートやトヨタカローラなどの一般企業に就労した。今春は、うどん店での調理実習を生かして、湯布院の有名旅館がプロデュースしたカフェに就職した女性もいた。

インスタグラムで評判に

うどん店「府内のおうどん」は、博愛会地域総合支援センターが昨年4月8日、同市府内町にできた新商業施設の2階に開店した。

複合公共施設(防災拠点)と市役所をデッキでつなぐ、生まれたばかりのエリア。「府内」は江戸時代までの旧称で、まさに大分市の中心部だ。

テーブル席18、カウンター席22の計40席。内装は一流のデザイナーに依頼して、おしゃれな空間に。自家製麺と、こだわりのだしで、大分県産の食材を使ったメニューをそろえた。

雇用契約が難しい就労継続支援B型事業の利用者や、どりーむの実習生ら約10人が接客や調理補助、洗浄作業などを担ってきた。

釘宮慶太施設長は「人気のインスタグラマーに『おいしいうどん店』として紹介された動画が、大バズりして、翌日から行列に。その後も盛況で、利用者の工賃も全国平均(月約2万3000円=23年)を上回る月5万円を達成。この店舗のおかげで、みなさん生き生きと仕事をしています」と話した。

障害者こそ、真ん中で働く

大分市のど真ん中への出店には、釘宮理事長の深い思いがあった。

「人間の数パーセントは障害のある子として生まれてくる。障害者は、それを担ってくれている。そう考えると、障害者は端っこではなくて、社会の真ん中で仕事をするべきだ。市民、県民が憧れるような場所で……」

「みんなの目標が大切」とも言っている。

「入学式、卒業式をする。メリハリのある寄宿生活。2年で親元に返す。目標があるから、一生懸命やれるのです」

福祉農場、カット野菜工場、リゾートホテル、大分県立美術館のカフェ……。博愛会は創立以来75年間、「生産する福祉」を実践してきた。釘宮理事長は言った。

「利用者のみなさんが作った質の高い商品を社会の人たちが競って求めてくる日が、もうそこまで来ています」

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