福祉新聞フォーラム「社会福祉法人決算のあり方・読み方」講義の概要

2024年0920 福祉新聞編集部

第9回福祉新聞フォーラムが10月3日、東京ビッグサイトで「社会福祉法人決算のあり方、読み方」をテーマに開催されました。公認会計士渡部博事務所長ら3人の講義の概要を紹介します。

財務諸表等電子開示システムから読む社会福祉法人の経営状態

公認会計士渡部博事務所所長 渡部 博 氏

今回のフォーラムでは、2018年度から23年度までの社会福祉法人の「財務諸表等電子開示システム」のデータの中から16の指標について時系列でお示しします。

法人の経営状況がこの6年間でどのように変化したのか、その背景にある環境の変化はどのようなものかをお伝えします。

19年から23年にかけて赤字法人の数は7427法人から8566法人に増えました。法人全体に占める割合も38・40%から43・80%に増えました。

これを如実に示すのが16の指標の一つ「事業活動資金収支差額率」です。当該年度の事業活動による収入と支出のバランスを示すもので、この収支差額率が高いと経営に余裕があるとみなされ、介護報酬の引き下げの理由にされることもあります。

18年度の収支差額率は平均が7・60%、中央値が7・10%でした。それに対して、23年度はそれぞれ6・70%、5・40%に下がりました。このことがどのような意味を持つのか、なぜそうなったのかについて解説します。

この開示システムは法人の経営の透明性を確保するため、福祉医療機構が構築したものです。その活用方法が分かれば、法人経営に役立てることもできるかと思います。

社会福祉法人の電子帳簿保存法と会計業務の電子化への対応

公認会計士渡部博事務所 室岡 良行 氏

電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類のデータ保存を可能とする法律で、2022年1月1日に施行されています。

社会福祉法人においては、すべての法人が電子帳簿保存法の対象となるわけではありませんが、電子帳簿保存法の対象かどうかにかかわらず、書類保存の電子化を進めている法人も少なくないと思います。しかし、多くの事業所では、一部は紙、一部は電子データでの保存という、いわば電子化の過渡期の事業所が多いのが現状と推測されます。

また、社会福祉法人の会計業務は、時代とともに広範化かつ高度化しており、さらに、働き方改革による長時間労働の改善や採用難による人手不足により、今まで以上に会計業務の効率化、生産性向上の必要性が増しています。

そこで、本セミナーでは電子帳簿保存法を契機として、社会福祉法人の会計業務をどのように電子化し業務の効率化を図るかについて把握していただくことを目的に、(1)社会福祉法人の電子帳簿保存法への対応(2)会計業務の効率化を目的とした電子化、具体的には、会計ソフトのクラウド化、フィンテックやスキャナーを利用した会計データの会計ソフトへの取り込み、RPA(Robotic Process Automation)の活用について解説します。

社会福祉法人のインボイス対応

公認会計士渡部博事務所 税理士 鳥原 弓里江 氏

社会福祉法人は、事業の性質上、消費税の非課税取引の割合が大きく、消費税の申告が不要な免税事業者も多いと思います。

2024年9月現在、課税事業者の消費税納税額において、免税事業者などからの課税仕入れについては、経過措置により一定割合の控除が認められており、インボイス制度による影響は抑えられています。

しかし、経過措置期間終了後は免税事業者などからの課税仕入れについて控除が認められなくなります。消費税の納税額への影響が大きくなることから、免税事業者などとの取引の見直しを行う事業者が出てくる可能性があります。

そのため、現在免税事業者である法人であっても、今後適格請求書発行事業者になるか、検討の可能性が出てくることが想定されます。

さらに、官民連携によりデジタルインボイスを普及・定着させる動きが始まっています。インボイスを電子化し、バックオフィスの業務プロセス全体をデジタル化する動きは、すべての法人に影響していくものと思われます。

本セミナーでは、「社会福祉法人のインボイス制度への対応」を目的に、インボイス制度の概要、適格請求書発行事業者になるべきかどうかの判断方法について解説します。

デジタルインボイスの概要、デジタルインボイスが定着することで会計・税務業務がどう変化していくのか、最新情報を紹介します。


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