医師偏在、年内に対策 武見大臣「待ったなしだ」(厚労省)

2024年0916 福祉新聞編集部
対策本部であいさつする武見大臣

厚生労働省は5日、特定の地域や診療科への医師の偏在を是正する対策本部を立ち上げた。開業医の多い地域での新規開業を抑制するため、必要な法令改正を検討するほか、地方の医療機関への財政支援を強化する。大臣をトップに部局横断で検討し、年末までに総合対策をまとめる。

同日の会議の冒頭、武見敬三大臣は「医師の偏在是正はもはや待ったなしの課題。この解消なしに国民皆保険制度を維持することはできない」と述べた。

29年には医師36万人

全国の医師の総数は増えており、2022年末で約34万人。厚労省は、現在は需要に対し医師が足りていないとみるが、29年ごろには医師が約36万人になって需要と均衡すると推計する。

現在は東京都、京都府、福岡県などは相対的に医師が多く、逆に岩手、青森、新潟県などは少ない。外科や産婦人科は医師の減少が続く一方、美容医療などを行う若い医師は増えている。

早期退院、在宅医療へ

患者の疾病構造や世帯構成に合わせ、医師がどこでどんな役割を担うかも重要だ。

厚労省は高齢者の医療については入院期間を短く抑え、早期にリハビリをしたり、在宅医療につなげたりすることを基本的な方針としている。

医師の果たす機能もそれに沿って介護との連携を重視する。介護施設には医療との連携を促し、医療ニーズに対応できる体制をつくるよう後押しする。

医師の偏在是正は医療機関を再編・統合する「地域医療構想」(都道府県が策定、27年度から新しい構想を開始)とも関係し、厚労省は都道府県の権限強化も視野に急ピッチで議論を進めている。

高齢単独世帯が増加

地域医療構想の見直しを議論する6日の検討会で厚労省は、高齢になるほど在院日数が長くなる傾向があると報告。その要因の一つとして単独世帯の増加があり、早期退院を阻んでいるとした。

高齢者人口に占める単独世帯の割合は今後さらに増えると厚労省は判断し、そうした高齢者を在宅医療で支える医師を増やしたい考えだ。