建設会社が見学クルーズにひとり親家庭を招待〈こどもの未来応援国民運動〉

2024年0909 福祉新聞編集部
クルーズ船で東洋建設スタッフの説明を聞く参加者ら

9年前から政府が提唱してきたこどもの未来応援国民運動で、一般企業が特色を生かして機会や体験を提供する活動が多様化している。8月には大手建設会社がこども家庭庁を通じて、ひとり親家庭に東京港の見学クルーズに招待した。「こどもらに何かできないか」。同庁には企業からの相談も多く寄せられているという。

8月26日午前9時、東京・台場の水上バス乗り場からクルーズ船が出発した。乗り込んだのは中学生と保護者ら約40人。こどもの教育支援を行う82団体で構成する一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会(青砥恭代表理事)を通じて参加したひとり親家庭だという。

主催したのは東京都千代田区に本社を置く東洋建設。1929年創立で海洋土木を得意とする総合建設会社だ。東京国際クルーズターミナルやレインボーブリッジの建設にも関わっている。

当日は1時間半にわたりクルージングしながら同社担当者が、東京港の歴史や周辺の建物などを説明。高潮などの防災対策などについても解説した。下船後、参加者らは別会場で講義を受けた。

同社の活動は昨年から。社会貢献について同庁に相談したところ、海に関わる同社ならではの企画を提案されたという。同社の北村健サステナビリティ推進部長は「困窮や親の多忙さなどさまざまな理由で、文化的な経験が不足する『体験格差』が社会問題となっている。自社の強みを生かせる活動で、少しでも力になれば」と狙いを話す。

応援国民運動は、こどもの貧困問題に社会全体で取り組もうと、内閣府などが2015年に始めた官公民の連携プロジェクト。企業や個人から募った寄付を、学習支援やこども食堂などを行う団体などに提供する「こどもの未来応援基金」が柱だ。22年度末までに寄せられた寄付金の累計は19億円に上り、うち6割を企業・団体が占める。

23年度にこども家庭庁が応援運動を引き継いでからは、運動に共感する企業と、民間の支援団体とのマッチングにも力を入れており、同庁支援局家庭福祉課は「寄付以外でどんな支援ができるかという企業からの相談も歓迎したい。今後も特色を生かした活動をサポートできれば」と話している。

東洋建設以外では、カレーハウスCOCO壱番屋の運営会社が学習支援団体へパソコンや参考書などを寄贈。住宅部品メーカーで作る一般社団法人リビングアメニティ協会はこども食堂に対して、ガス炊飯器や温水洗浄便座などを寄贈した。

洋菓子の製造販売を行う株式会社プレジィールはこどもが職業体験できる「キッザニア東京」のチケット100枚を提供している。

同庁支援局家庭福祉課は「寄付以外でどんな支援ができるかという企業からの相談も歓迎したい。今後も特色を生かした活動をサポートできれば」と話している。