職員の4割が外国人 地域交流にキッチンカー(光風会、山梨)

2024年0906 福祉新聞編集部
ベトナム料理のキッチンカー(昨年11月5日、甲州市のえんざん朝市で)=光風会提供

介護・福祉現場の人手不足により外国人職員の割合が高まる中、山梨県甲州市の社会福祉法人光風会では全職員の約4割を占める外国人職員が活躍している。日本人との同一労働同一賃金を守り、ベトナム料理のキッチンカーを走らせるなど外国人の地域交流事業にも力を注ぐ。熊谷信利理事長(41)は「いつまでもここで働きたいと思ってもらえる法人を目指したい」と意欲的だ。

光風会で就労している外国人は70人。日本人男性と結婚しているフィリピン人介護福祉士1人のほかはベトナムからの受け入れだ。現在の在留資格は介護、医療、特定活動や配偶者などで、技能実習生はいない。

ベトナム人スタッフたち

職種は幅広い。一番多いのが介護士(支援員)の55人(うち28人は介護福祉士)だ。次いで看護師・准看護師の計8人、生活相談員、訪問介護のサービス提供責任者、障害者総合支援法に基づくサービス管理責任者、グループホームにおける世話人、介護助手などさまざま。ベトナムとのEPA(経済連携協定)第1陣で来日した看護師・介護福祉士のグエン・ティ・トゥ・ホアイさん(35)は昨年、合格率20%前後と難関の介護支援専門員(ケアマネジャー)試験に合格、研修を終え4月から法人の特別養護老人ホームでケアマネの仕事を始めるなど、各施設に分かれて利用者を支えている。

特に目を引くのは運営する救護施設「甲州市鈴宮寮」(定員80人)と養護老人ホーム「山梨市立晴風園」(同75人)の看護職が全員外国人であること。みんな母国の看護大・短大で3~4年間学んで看護師資格を得たのちに来日して3~10年目。日本の病院などで働いている間に日本の看護資格を取り、あるいは法人が行う学習支援を経て看護師試験に合格した。

精神障害や認知症、身体障害など多岐にわたる症状に対処できるコミュニケーション能力や医療、看護の知識、さらに日本の生活、文化についてもある程度の知識が求められるポジションだ。

利用者の受診同行に欠かせない運転免許証の取得に始まり、通院の方法、病院の医師や看護師とのやりとりのポイントなどを日本人スタッフが同行しながら指導、マスターしていった。

「利用者が『痛い』と訴えるとき、実際はどうなのか判断に悩むときはあります」と看護師2年目のグエン・ティ・トゥ・ヒエンさん(29)は正直に話す。このような悩みは日本人の看護師とさして変わらない。

熊谷理事長は「福祉施設における看護業務の中心は利用者の日々の健康管理。緊急時や夜間の急変に小人数で対応しなければならないこともあるが、福祉領域における看護業務の専門性のあり方を考えていくことにつながれば」と語る。

一方、これだけの外国人スタッフを擁すると、気になるのは地域との関係だ。外国人に対する理解が進むように2年前、ベトナム料理のキッチンカーを導入した。ベトナムの人気メニューであるバインミー(フランスパンに肉や野菜などを挟んだサンドイッチ)やフォー(米粉で作る麺料理)など地域のイベントや法人の幼保連携型認定こども園が主催する「こども食堂」(月1回)に出掛け提供、販売する。「孤立しがちな外国人と地域住民の交流の場にしていければ」と、ホアイさんは来場者との会話を楽しんでいる。


光風会 1991年設立。主に山梨県内で特養ホーム、養護老人ホーム、認知症や障害のある人のグループホーム、高齢者デイサービスセンター、幼保連携型認定こども園、地域生活定着支援センターや訪問介護、居宅介護支援、計画相談支援、有償運送、居住支援法人、登録支援機関など10施設22事業所を運営。地域に暮らす外国人を対象に日本語教育支援も実施している。職員203人。