〈厚労省幹部に聞く〉サービスの質を底上げ 野村知司障害保健福祉部長
2024年08月29日 福祉新聞編集部――2019~20年の企画課長以来の障害保健福祉部になります。
実は障害福祉行政との関わりはそれほど長くありません。近年は国会連絡室、官邸参事官室、大臣官房総務課などで働いてきましたので、永田町かいわいで仕事をしているという印象を持つ人が多いと思います。
――障害福祉サービスの動向をどう見ていますか。
障害福祉サービスの総給付費は24年度予算では4兆円となり、サービス量は年々拡充されてきています。一方、障害者のより良い生活や自己実現に一層寄与できるよう、サービスの質をさらに底上げしていくことが問われてきます。ニーズは多種多様ですので、それに応えられる地域体制づくりが課題です。
――4月に障害福祉報酬の改定がありました。
サービス量が増える中、質の確保、向上を下支えするのが報酬です。今回、サービス提供を支える職員の処遇改善を行いましたが、人材の確保、定着により経験やスキルを積み上げ、支援に生かしてもらうことで、障害者の人生選択や自己実現に向けても良い効果が生まれると思います。
――施設入所者の地域移行に関する調査研究が始まっています。
地域移行に向けて施設内でどう支援していくのか、施設職員のノウハウを地域でどう生かすかなど、実例を踏まえながら調査研究を進めていきます。その中で、入所施設などの待機者について各自治体の定義や把握状況の調査も検討していきます。
――改正精神保健福祉法も4月に全面施行されています。
精神障害者が地域で生活していく上で必要な支援をつなげる「地域包括ケアシステム」の構築に向けて取り組みます。また、医療保護入院の入院期間を定めて一定期間ごとに確認する仕組みの導入なども行いましたが、改正法付則3条も踏まえつつ、今後の施策について5月に立ち上げた検討会で引き続き議論していきます。
――読者にメッセージをお願いします。
障害のある人たちに日々寄り添っている現場の皆さんから学ばせてもらうことが必要だと思っています。制度改正や障害報酬改定が現場でどう生かされ、どんな課題があるのか、今後の実施状況も見ながら、次の報酬改定や制度の見直しに生かしていきます。
のむら・さとし=1968年9月19日生まれ。大阪府出身。東京大卒。92年入省。