福祉拡充へ財源確保を 全社協が来年度予算要望

2024年0604 福祉新聞編集部
朝川局長(左)に要望書を手渡す平田委員長(中央)

全国社会福祉協議会政策委員会(平田直之委員長)は5月28日、厚生労働省に対して来年度予算に関する要望書を提出した。少子化対策の財源確保に向けた歳出改革が本格化するのを前に、必要な福祉制度の財源は確保するよう要請。人材確保に向けた処遇改善も求めた。

これまで政府は少子化対策の財源として3兆6000億円を確保すると表明。このうち社会保障の歳出改革を2028年度までに行うことで、1兆1000億円を捻出する方針を示している。

同日、厚労省を訪れた平田委員長は「他分野の財源を削減するのではなく、未来への投資として必要な財源を確保してほしい」と話し、高齢者や障害者、こども分野の福祉制度に対する財源確保を求めた。

また、物価高騰に伴う支援も強調している。水道光熱費や給食費に対する補助拡充を要望。建て替えや大規模修繕ができない事態も起きているとして、施設整備費の補助額引き上げや、工期の長期化を踏まえた補助要件の弾力化を訴えた。

多くの民間企業では賃上げが行われている。しかし、福祉サービスは報酬を政府が決めるため限界があり、賃金格差が拡大しているという。そのため要望書は、全産業平均と同様の賃金水準確保に向けて、大幅な処遇改善を要請。福祉施設のソーシャルワーク専門職の加配も求めた。ただ、現場のICT(情報通信技術)化については「負担軽減を目的とし、職員配置基準の緩和措置はしないでほしい」とくぎを刺している。

地域共生社会の実現に向けた関連施策の拡充も求めた。具体的には、重層的支援体制整備事業の必須事業化や、社会福祉法人に対する資金使途制限の撤廃などを示した。

このほか(1)全都道府県への災害福祉支援センターの整備(2)生活福祉資金の償還免除規定見直し(3)民生委員・児童委員の成り手確保に向けた環境整備――などを盛り込んでいる。

要望書を受け取った朝川知昭社会・援護局長は「向いている方向は同じだ」と述べ、要望の実現に前向きな姿勢を示した。その上で、近日中に社会福祉法の改正に向けた議論をスタートさせると説明。主に、重層事業や身寄りのない人への対応、福祉人材確保、社会福祉連携推進法人などがテーマになるという。