〈社会福祉ヒーローズ〉介護は「生きがい支援」

2024年0420 福祉新聞編集部
94歳の女性利用者と制作した絵本。後列左が吉田さん

社会福祉法人フラワー園

特別養護老人ホーム「あんのん」・名古屋市

施設長 吉田貴宏(39)

 

吉田さんにとって介護の仕事は「生きがい支援」だ。元気なく過ごしている利用者にアプローチして「もっと生きたいと思うようになった」「大切に思われて幸せ」などと言われた経験から、人生を賭けて取り組んでいこうと16年前に決意した。

 

当時は「亡くなるまで過ごす場所」という感じも残っていた。現場から「危ないから何もしないで」「けがをするから座っていて」など、生きがいを持つのは難しいと思うような言葉が聞こえていた。だからこそ、生きがい支援を実践できるように挑戦しなければいけない、小さな革命を起こそうと思った。

 

一人ではできないので、地元の友人や専門学校の同級生らに声を掛け、仲間を集めた。自分の気持ちが独り善がりで退職者も出たが、それでも利用者一人ひとりの生きがいを支えるプロジェクトを実行してきた。

 

デイサービスの女性利用者、Aさん。当時94歳。絵を描くのが得意だったことから、生きがい支援として絵本の出版を提案した。Aさんの絵を多くの人に見てもらうだけでなく、介護の仕事の本質を次世代に伝えたいという自分たちの夢も乗せた。メンバーが分業して関わり、絵本「つむぐ つながる 共に。」(32ページ)が完成した。

 

主人公の介護福祉士が、利用者の生きがいを生み出せているのか自問自答する物語。一人で生きられることが自立ではない。周りの人とつながりながら、助けたり助けてもらったり、ありがとうと言ったり言われたり。自分に自信を持って生きる、とつづっている。絵本は全国の図書館、名古屋市内の全小中学校373校に寄贈した。

 

絵本以外にも、介護職員のアイドルグループをプロデュースして介護の魅力を発信したり、介護に関わる人を応援するラジオ番組のパーソナリティーをしたり、一人ひとりが活躍できる場を提供する、との思いで活動している。革命は自分一人が起こすのではなくて、介護に関わる人の気付きによって明るい未来が見えてくる。

 

自分の挑戦のそばにはいつも仲間がいて、誰よりも「自立を支援してもらっている」と自覚する。だから、自分も仲間の期待に応え、これからも一緒に生きがいの重要性を追い続けていきたい。