高齢者施設で虐待防止の意識浸透 PDCAを3カ月周期に

2023年0222 福祉新聞編集部
虐待防止週間のテーマを張り出す石原さん(左)

高齢者施設での虐待が増え続ける中、どう対策を強化すべきか。東京都世田谷区の特別養護老人ホーム「砧ホーム」(定員60人、短期入所4人)は多職種が参加する委員会が中心となり、虐待防止対策のPDCA(計画、実行、評価、改善)に3カ月周期で取り組むことで職員の意識を高めている。

 

厚生労働省は虐待防止対策を推進するため、2021年度から全介護サービス事業者に委員会開催、指針作成、担当者配置などを義務付けた(3年間の経過措置あり)。砧ホームはそれを機に取り組みの強化に乗り出した。

 

まずは虐待防止の委員会を立ち上げ、介護支援専門員の石原佳子さんを担当者とした。看護師ら6人のメンバーで毎月開いている。石原さんは「介護職員だけの活動にならないように多職種が参加すること」をポイントに挙げる。

 

以前のPDCAのサイクルは(1)「虐待の芽チェックリスト」(東京都福祉保健財団)を使って職員が年4回自己点検する(2)チェックリストの結果を分析して年度末の勉強会で不適切と思われるケアの改善策を考える(3)翌年度の事業計画に位置付ける(4)現場で実行する、という1年周期だったが、これを3カ月周期に変更した。

 

取り組みが計画だけで終わらないように、改善策を踏まえたテーマを定め、現場の実行期間に「虐待防止週間」を設けている。テーマは例えば「介助前の声掛け意識しましょう~声を掛けないことも不適切ケアですよ」など。石原さんは「委員会で話し合い、職員に理解してもらえる内容に落とし込んでいる」と言い、職員の目につきやすい場所に掲示し意識付けを図っている。

 

さらに虐待防止週間後に職員アンケートも実施。「できた、できない」を聞くだけでなく、「自分だったらどんな気持ちになるか」といった、本人の気づきを促す質問も必ず取り入れている。

 

こうした3カ月周期のPDCAを繰り返すうちに、次第に職種に関係なく、現場に虐待防止に関する意識がより浸透するようになった。施設長中心から現場主体の取り組みに広がったことも大きな成果だ。

 

ただ、PDCAを短い周期にすれば職員の負担増も懸念される。鈴木健太施設長は業務時間内で行っているとした上で「『互いに学び、讃え、成長し合う』を施設の理念に掲げており、本人の成長やスキルアップにつながると理解してもらっている」と話す。お互いに専門性を高めようという施設の土壌が取り組みを支えている。

 

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