〈能登地震から5カ月〉施設に3カ月寝泊まり、職員も心身に疲労(穴水町)
2024年06月04日 福祉新聞編集部地震から5カ月。被災施設を訪ねると、自らも被災して先を見通せない状況に、福祉施設職員から疲労や不安の声が聞こえてきた。
石川県穴水町の特別養護老人ホーム「能登穴水聖頌園」(社会福祉法人牧羊福祉会)では法人職員150人(発災時)の大半が町内に住んでおり、自宅も被害に遭った。
その一人、介護職員の金谷さなえさん。発災時は勤務中で1月3日に自宅に戻った。車で20分の距離が5時間かかり、余震のため貴重品だけ持ってすぐ引き返した。自宅周辺は被害が大きく、16人が亡くなった。その中には金谷さんの高校の同級生もおり、金谷さんは「もうここにはいたくない」との思いが強い。
当初は避難所にいたが、法人の計らいで1月5日から施設で寝泊まりした。私物は段ボール一つ分。最低限の衣服などだけだった。
施設では利用者の声が聞こえて完全にプライベートを保つことが難しく、今後の不安もあり、よく眠れなかった。勤務6年間で初めて体調不良で早退した。退職も考えたが、職場の人間関係が良いので思いとどまった。
4月6日に仮設住宅に入居した。3カ月施設で過ごしたことを振り返り、「こんなに長くなるとは思わなかったが、施設に感謝している」と話す。
ただ、これで不安が解消されたわけではない。仮設住宅は2年で退居しなければならない。被災のショックは完全に癒えておらず、金谷さんは「先のことを考えないといけないが、まだ気持ちの整理がつかない」と言う。
金谷さんのほかに7人の職員が仮設住宅に住んでいるため、殿田和博施設長は「職員寮などを用意して安心して働けるようサポートしたい」と話す。
ほかの被災施設でも、こどもを亡くした職員や、「喪失感がある。仕事があるから持ちこたえている」と話す職員もいた。