能登半島地震で福祉施設も被害多数 水道、電気、ガス止まる 

2024年0113 福祉新聞編集部
雪が降る中、地震直後の火災で焼け落ちた「輪島朝市」周辺を調べる警察官ら=7日、毎日新聞社提供

石川県能登地方を震源とする地震が1日夕に発生した。最大震度は7、マグニチュードは7・6。11日午後3時時点で213人が死亡、524人が負傷した。住宅被害は3877棟に上る。福祉施設も石川、新潟、富山3県で計231カ所が停電、断水、建物のひび割れなどの被害に遭った。新年のお祝いムードが一転。十分な明かりや暖を取るすべもなく、極寒の夜を過ごした施設もある。

 

地震は北海道から九州にかけて観測され、石川県では1日から6日にかけて震度5以上が15回もあった。石川県能登には大津波警報が出され、輪島市では120センチ以上の津波が押し寄せた。道路が至るところで陥没し、迅速に支援に入れない状況が続いている。

 

被害の大きい輪島、珠洲市など石川県内の17市町、新潟県内の14市町、富山県内の13市町村、福井県内の3市の計47自治体に災害救助法が適用された。また、政府は11日の閣議で能登半島地震を「激甚災害」に指定した。

 

福祉施設の被害は高齢者施設191カ所、障害福祉施設38カ所、救護施設2カ所。

 

市町村別で被害が最も多いのは石川県七尾市の36施設。ほかに、輪島市20施設▽志賀町、津幡町各17施設▽能登町15施設▽かほく市、穴水町、中能登町、羽咋市各12施設など。また、3県で60の児童施設も被害に遭った。

 

輪島市内の施設の多くは電気、ガス、水道が止まった。地域密着型特別養護老人ホーム輪島荘(社会福祉法人健悠福祉会)は高台の施設につながる坂道が土砂崩れで一時車が通れなくなった。ストーブが支給されたのが8日、電気が使えるようになったのが9日で、それまで寒さを耐えしのいだ。北村寿美子統括は「自宅が被災して施設で寝泊まりしている職員もいる。水の確保も心配」と話す。

 

輪島市の特別養護老人ホームあかかみ(社会福祉法人門前町福祉会)の森下進施設長も「特に断水で困っている。風呂も入れず洗濯もできず衛生面が心配」と言い、水道復旧に時間がかかることを懸念する。95人の利用者のほかに、避難所で過ごすのが難しい地域で生活する認知症の人など約20人を受け入れている。職員約40人も被災する中、デイサービスを休止して職員を特養に配置しているが、森下施設長は「休みを取ってもらうことができず職員の疲労も心配」と話す。

 

また、同市河井町の「輪島朝市」の周辺にある小規模多機能型居宅介護事業所「サテライト笑ちゃけや」(社会福祉法人弘和会)は建物が全焼した。地震発生時、事業所には職員2人と利用者3人がおり、大津波警報を受けて高台に避難。その後、法人内の障害者グループホームに移った。事業所に誰もおらず負傷者はいない。

 

「寒さがとてもひどい」と話すのは石川県穴水町にある養護老人ホーム朱鷺の苑(社会福祉法人北伸福祉会)の不二井悟施設長。電気、ガス、水道が止まり、暖を取る方法がなかった。さらにインフルエンザも発生し、7人の利用者が体調を崩して緊急搬送され、4人が入院した。

 

地震により4階建ての新館が傾いてしまい、「解体するしかない」と言う。新館の利用者約25人は本館の食堂で厳しい避難生活を余儀なくされている。

 

 

福祉関係団体も被災施設や避難所の支援に動いている。

 

全国社会福祉法人経営者協議会は、地震発生後から被害状況や支援ニーズの把握に努め、被災地入りした石川県社会福祉協議会、石川県、厚生労働省などと情報を共有して対応に当たる。DWAT(災害派遣福祉チーム)は6日から石川県に入り、初動対応支援の確認や、8日にいしかわ総合スポーツセンターに開設した1・5次避難所(ホテルなどの2次避難所に入るまでの一時的な避難先)で支援活動などを行っている。

 

全国老人福祉施設協議会は、災害対策本部を設置し、被災4県の老施協や厚労省と被害状況などの情報を共有。3日11時までに少なくとも39施設が被災したことを把握した。石川県老施協から老施協DWAT(厚労省主体で発災約2週間後に活動を始める介護職員応援派遣より前に被災施設で支援する)の派遣要請を受け、12日から輪島、白山市の特養に計10人の介護福祉士らが支援に入った。