児童養護施設建て替えでクラウドファンディング〈唐池学園・神奈川〉
2025年11月11日 福祉新聞編集部
資材費などの上昇により建築費が高騰する中、児童養護施設の建て替えで、インターネットを通じて活動やプロジェクトへの思いを社会に呼び掛け、広く資金を募る「クラウドファンディング」に取り組む法人がじわり広がっている。借り入れ以外の新たな資金調達の手段となり、福祉関係者以外に施設を知ってもらえる点も強みだ。
今年設立80年を迎えた神奈川県綾瀬市の児童養護施設唐池学園の本体施設(鶴飼一晴園長、定員30人)は築57年になり、雨漏りや廊下の天井が剥がれるなど老朽化が進んでいる。こどもたちの個室は4畳半、風呂場やトイレも手狭で快適な住環境とは言いがたい現状がある。
老朽化と、国が求める小規模化、地域分散化、高機能化、多機能化を踏まえ、コロナ禍前から建て替えの検討を進めていた。施設の敷地(5785平方メートル)内を分筆して、いずれも6人定員の本体施設とグループホーム4棟を建て、こどもたちの個室は6畳となる。現在実施する措置解除された若者らが対象の児童自立生活援助事業のための建物も新設。8月に建て替え工事が始まり、来年2月末には新施設の大半が誕生する予定だ。
ショートステイ事業も現在実施しているが、定員を増やし、専門棟などを設ける構想もあった。しかし、全体の建築費が約12億円もの高額になり断念。それでも建築前の設計監理料や敷地内の大量の樹木の伐採・伐根の費用なども含めると建て替えの総額は9億円以上となる。国、県の補助金と自己資金だけでは限界があり、福祉医療機構からの融資を受けた。
多額の自己資金を投入するため、今後の安定的な施設経営に向けて少しでも負担を減らしたい同園が着目したのがクラウドファンディングだ。児童養護施設では先行事例があり享誠塾(金沢市)や鹿か深ふかの家(滋賀県甲賀市)などが建て替えに伴いクラウドファンディングを実施していた。
建て替えプロジェクトチームのリーダーで児童指導員、社会福祉士の安部慎吾さんは「単なる資金調達にとどまらず、児童養護施設の存在や、ここで生活するこども、若者の現状を広く社会に伝えることができる。支援を受けたこども、職員は大きな励みになる」と話す。
唐池学園のクラウドファンディングは12月14日まで。目標額は家具や家電など備品の購入費として350~1000万円。寄付の申し込みはクラウドファンディングサイト「レディーフォー」から。

