施設の改修か、建て替えか 福祉法人理事長に聞いた

2025年1026 福祉新聞編集部
老朽化が進み、改築などを検討している二宮保育園=同園提供

8日に開催した第10回福祉新聞フォーラム「福祉施設の延命と再生」には、全国から100人を超える社会福祉法人理事長らが参加した。施設の老朽化で全面改修か建て替えかを迫られる法人、築40年の施設を必要な修繕で「なるべく長く使いたい」と考える法人もあった。法人理事長に施設の現状や課題などについて語ってもらった。

施設の再構成を検討

奥州いさわ会(岩手県奥州市)

岩手県奥州市で高齢・障害・保育事業を展開する社会福祉法人奥州いさわ会(藤田春芳理事長)は、施設の再整備を検討している。

高齢者部門は、築36年が経過した最も古いやまゆり荘に加え、築23年のぬくもりの家、築13年のやなぎの里の特別養護老人ホーム3施設を運用。

このうち同法人では、やまゆり荘の再整備を計画している。施設は多床室(30床)や従来型個室(10床)などがある古い建屋と、後で増築した個室ユニット(20床)のある建屋で構成しており、障害など他部門も含めた多機能拠点として再活用する方針。

計画によっては特養の収容人員が減少する可能性があるが、ほかの2施設も合わせた供給力で地域のニーズを十分吸収できるという。有識者の意見を聞きながら、具体的な計画を練っていくことにしている。

障害者部門は、築20年のひまわりの家と、築9年の工房さくら・ぱん日和の就労継続支援B型事業を行う作業棟を2棟保有しており、継続して運用していく考え。

保育施設は、いさわこども園と愛宕保育園の2施設を運営。愛宕保育園は2027年に閉園予定で、24年4月に開設したばかりのいさわこども園に園児を編入する予定だ。

奥州市は、岩手県内でも人口減少が進む地域。ピーク時の20万人から24年12月末時点で約10万8000人とほぼ半減している。

藤田理事長は「社会福祉法人の連携、合併がますます求められる時代になったと実感している。今後も関係機関と垣根を越えて連携し、地域と歩んでいきたい」と話した。

奥州いさわ会 旧胆沢町の3法人の愛育会、胆沢やまゆり会、胆沢コスモス会が2021年4月1日に合併して設立。運営事業=特養3施設▽就労継続支援B型事業(作業棟2棟)▽グループホーム4軒(借家)▽保育所2施設。職員数=高齢部門285人▽障害40人▽保育47人――計372人。

保育所老朽化で決断

二宮福祉会・わかば園(岡山県津山市)

社会福祉法人二宮福祉会、児童養護施設わかば園の松田浩一郎理事長・園長に聞いた。

築50年近い二宮保育園はこれまで大規模修繕はしていない。雨漏りしており、このままいけば配電盤が雨水にさらされる懸念もあるなど老朽化は深刻だ。全面改修か建て替えかを決断して、早ければ再来年度に着手したい。借り入れなしで、自己資金と国、自治体からの補助金で対応したいが、昨今の建築費の高騰が気掛かりだ。

地域ではこどもが減り、待機児童は解消しており、このまま1法人1保育所だけで運営を継続していくのは厳しい。改築などを機に放課後児童クラブ(学童保育)など保育以外の事業に取り組むことも視野に検討を進めている。

築40年以上経過していた児童養護施設わかば園は全室個室化・ユニット化のために2019年に建て替え、併せて定員を70人から36人に下げた。旧施設は男子、女子で建物が分かれており、食堂と風呂も建物が別々。女子が生活していた建物を壊して新設した。

総施工費はおよそ4億3000万円。自己資金と国・自治体の補助金で賄うことができた。近々に改築の必要性はないが、将来を見据えてこつこつと資金を積み立てている。可能ならば借り入れに頼りたくない。

現在、少子化などを背景に定員割れしている。将来建て替えの際は、地域小規模施設にして定員をさらに引き下げることは避けられないだろう。男子が生活していた旧施設については、こどもの居場所など地域支援で活用できないか模索したい。

二宮福祉会、わかば園 両法人とも1法人1施設。同会が運営する二宮保育園は1978年設立。定員は90人、職員数は25人。53年に社会福祉法人化されたわかば園は児童養護施設を運営する。職員11人。

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