身寄りない高齢者支援、新規事業立ち上げを要望〈全社協〉
2025年11月10日 福祉新聞編集部
全国社会福祉協議会は10月20日、厚生労働省に対し、現在検討が進む身寄りのない高齢者らを支援する新たな事業について、既存の権利擁護支援とは別にすることなどを求める要望書を提出した。日常生活自立支援事業(日自事業)を拡充し、対象や支援内容が広がることに全国の社協から不安の声も出ているという。
国の推計によると、2040年の1人暮らし高齢者は約900万人に達する。今後も身寄りがなく、入院手続きや死後事務などのニーズを持つ高齢者は増大する見込みだ。
そうした中、厚労省は9月の審議会で、都道府県と指定都市社協が権利擁護支援として行っている日自事業を拡充する方針を示した。支援対象を従来の認知症などで判断能力が不十分な人だけでなく、判断能力があっても身寄りがなければ支援対象とする。
実際26年度の概算要求では、日自事業で現在は規定されていない身寄りのない高齢者らへの入院手続きや死後事務などを行うと、最大で600万円の加算を新たに設ける方針が示されている。
こうした厚労省の動きに要望書は「全国の社協から不安と疑問の声が多数寄せられている」と指摘。慎重な審議と丁寧な経過説明を求めた。その上で、日自事業などの権利擁護支援と、身寄りのない高齢者らへの支援はニーズや状態像が異なることなどから別事業とするよう要望。「現状の仕組みのまま対象者だけを広げると、重い課題を抱えた人への支援が後回しになる可能性がある」(全社協)という。
現行の日自事業は、定期的な見守りとともに、日常の金銭管理や通帳の管理などを実施。社協への補助金は1人当たり月7900円。利用者が支払う費用は1回1200円となっている。
全社協は「ニーズがあるのに予算を確保できない自治体もあるなど、日自事業の体制は脆弱だ。持続可能な仕組みとなるよう抜本的な予算措置がなければ事業の継続自体も危うい」と話している。

