〈福祉新聞フォーラム〉福祉施設の延命と再生 第2部

2025年1020 福祉新聞編集部

将来需要から計画変更も重要

福祉施設の建て替え、大規模改修、修繕について、3件の実例を紹介します。

大泉障害者支援ホーム

1例目の社会福祉法人東京援護協会(練馬区)が運営する「大泉障害者支援ホーム」は、東京都から民間移譲された施設。35年が経過した建物の老朽建て替えを機に、利用者の高齢化対策、事業内容の見直しを行い、同一敷地内で仮設建物を建設、利用しながら既存建物を順次解体して建て替えをした事例です。

管理・作業棟、生活棟と機能ごとに分散されていた分棟型旧施設を、1棟に機能を集約することで高齢化した利用者の動線短縮と、支援員の見守りやすい安全な施設を実現。就労継続支援B型事業の作業にレタスの水耕栽培を導入し、新しい事業の取り組みも実現させました。

また、大泉中央公園に面した「Cafeビーボツリー」と「大泉ガーデン」は、来園者が利用できる憩いの場として運営されており、地域に開かれた施設として生まれ変わりました。

特養「愛泉苑」

2例目の「愛泉苑」は、社会福祉法人愛の泉(埼玉県加須市)が運営する特別養護老人ホームです。当初は耐震性に問題がなく、建設費の高騰などを理由に、大規模改修による延命が検討されましたが、共有スペース不足、感染症対策の限界、水害リスクなどを背景に、将来を支える施設にはなり得ないと判断し、建て替えとなりました。

計画のポイントは「災害に強い施設」です。井水プラントの設置や、パンデミック(世界的流行)時に運営を継続するための管理体制が検討されています。

最大の特徴は「全個室従来型」の居住スタイルの採用です。理由として、生活の質の向上、感染症対策のほか、利用者の費用負担が低く、待機者も多いため、稼働率も確保しやすいことが挙げられます。スタッフにとっても機能的で運用しやすい空間となります。

特養「ふるさとホーム」

3例目の社会福祉法人学正会(福岡県柳川市)が運営する「ふるさとホーム」は1970年建設の施設で、今年10月着工、2026年完成を予定しています。当初は建て替え計画で補助内示も受けていましたが、将来需要を見据え、建て替えではなく大規模改修による既存施設の延命を選択しました。

従来型の特養を95床(5床減)とし、ショートステイ5床の計100床にしたのは、職員配置の効率化を考えてのことです。生活単位を少人数化し、集団から個別ケアに変えたことが、計画の最大のポイントです。

あまり使われなくなった機能回復訓練室のスペースを一部活用し、地域交流スペースを新設します。栄養士による在宅高齢者向けの栄養指導教室や、こども食堂、学習スペースのほか、家族、近隣住民、スタッフが利用できるイベント広場などへの活用を想定しています。空いている時間帯はスタッフのフリースペースになります。

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